これが取り立て交渉のリアルだ!
消費者金融の取り立てというと、いまだに、「怖い」、「暴力的」という印象をお持ちの方も多いと思いますが、それは遠い昔の話。
「コンプライアンス重視」、「消費者保護」が叫ばれる昨今の取り立ては、それほど単純なものではありません。
無茶を押し通すのは、むしろお客の方だったりすることも多く、イマドキの取り立ては、それをなだめ、落ち着かせ、どうにかして再度返済意欲を持たせるスキルが必要なのです。
ここでは、実際に取り立て業務を長年経験してきた筆者が、そのリアルなやり取りをお伝えしていきます。
Contents
様々に逆ギレするお客
お客の中には、こちらが返済を迫ると、「逆ギレ」して開き直る方もいます
「迫る」といっても、こちらは決して威圧的な態度をとっているわけではありません。
具体的には、以下のような感じです。
●顧客A(独身男性23歳)の場合
返済期日から1カ月以上返済も連絡もなく放置していたお客。
朝一番(AM8時)に電話をして、やっと連絡が取れたと思ったら、眠たそうなけだるい声で、こう言い放ちました。
「ああ~、他の支払いに回してしまったから、いまは払えません。」
「そんなことでは困ります。いつごろまでに支払ってもらえるのですか。」
「仕事も減ったから、落ち着くまでしばらく待ってください。払えるようになったら、またこちらから連絡します。」
「ある時払いの催促なしじゃないんですよ。」
「じゃあ、どうしろと言うのですか、盗みでもして、払えとでも言うのですか!」
●顧客B(独身女性30歳)の場合
融資してから1度の返済もないまま、連絡もなく2カ月が経過。
内容証明通知を出したところ、やっと先方から連絡が入りましたが、悪びれることなく、こう言い放ちました。
「バイトを辞めて、払えなくなりました。」
「どうしていままで連絡すらくれなかったのですか。」
「病気で体調が悪いんです。「うつ病」と診断されました。なんなら診断書を送ってもいいです。」
「そんなものは、いりません。ご家族には相談されましたか。」
「実家には内緒だから話はできません。とりあえずいまは生活してゆくだけで精一杯なので、放っておいてください。」
「そんなことではこちらも困ります。」
「じゃあ、どうしろと言うのですか、私に死んででも払えとでも言うのですか!」
●顧客C(既婚男性50歳)の場合
個人で飲食店経営の自営業者。
返済を迫ると粗暴な態度をとってきます。
「客が来て、日銭ができたら払うが、来くまで払えんわ!」
「そんな、あてどない話では困ります。一部だけでも返済できませんか。」
「あんたもしつこいな、ないものをどうやって支払えっていうんじゃ、あっ!!」
さて、みなさんが消費者金融の債権回収担当だったら、このようなケースの場合、どんな対応をしますか?
私の対応方法
前述したとおり、私は長年、消費者金融で顧客管理をやってきました。
その経験から、ひとつ「能書き」のようなことを言わせてもらえば、実際の顧客対応はマニュアル通りにはいかず、何が正解なのかは、その時々で変わります。
まして、海千山千の多重債務者を相手に取り立てをするのであればなおさらです。
お客が電話に出た時間帯や、その顧客の息づかいのようなものから、状況や空気を察知し、それに合わせた対応をとることが必要なのです。
このことを踏まえたうえで、あくまで私なりの対応をご紹介しておきます。
●顧客A(独身男性23歳)への対応
電話をした時間帯や、本人が眠たそうな声だったことから、「寝起き」だと察しがつきます。(ひょっとしたら夜勤で仕事をしていたのかもしれません。)
そんな状態でいきなり、まくしたてても、まともな話はできません。
相手は1カ月も連絡もせず、放置をしていたわけですから、担当者として、つい、カッとなってしまう気持ちも、理解できますが、ここはグッとこらえるべきです。
相手が電話にでて眠たそうであれば、
「〇〇さんお疲れのご様子ですが大丈夫ですか。」
「ずっと連絡がとれないから心配してましたよ。」
と相手を思いやる言葉をかけておきましょう。
このような言葉をかけておくことで、その後、多少、厳しいことを言っても、相手は反論しにくくなるものです。
そして、相手が落ち着いたところで、返済の話をはじめます。
そこで収入減を理由に無期限の返済の引き伸ばしを要求されたときは、次のような話をするのです。
「それは大変な状態だったんですね。私としても出来る限り相談に乗りますが、これ以上、滞納が続くと、指定信用情報機関に「事故情報」が登録されてしまいます。一旦、事故情報が登録されると完済しても5年間は抹消されないので、結果、〇〇さんが不利益を被ることになってしまいます。それを防ぐためにも何とかならないですか。」
と、指定信用情報機関に事故情報が登録されることを引き合いにだして、こちらが厳しく返済の請求をしているのは、相手が不利益を被ることを心配してのことだということを強調しておくのです。
この方の場合は、年齢が若いので、本人さえ、その気になれば、実家からの援助も見込めるかもしれません。
●顧客B(独身女性30歳)への対応
Bのように、病気を盾に返済猶予を申し出る顧客に、しつこく返済を迫ってもトラブルになるだけです。
また、この場合、Bの病気が、比較的軽度のものなのか、それとも重度のものなのかも判断ができません。
しかし、Bが言うように、病気のため返済もままならないような状態になっているのであれば、これは、やたら返済を猶予しても仕方がありません。
問題なのは、Bがある程度の覚悟を持って発言していることなのか、それとも、単なる、引き伸ばしの口実なのかということです。
私であれば、その覚悟を問うため、次のような話をします。
「ご病気であることはわかりました。返済についてですが、もちろん少しの間だけ待って欲しいということであれば相談には乗れますが、今後、全く支払いができないということであれば、相談に乗れる範囲をちょっと超えています。もし、身内などからの援助が見込めないのであれば、借金は弁護士などに依頼をして自己破産などの整理をすべきですし、生活保護などの福祉にも頼るべきです。もし、そのような手続きを取らないで放置してしまった場合は、当社から訴訟を起こすことになってしまいかねません。とりあえず支払いを継続する意志があるのであれば、まずは、遅れている分だけでもなんとかご相談できませんか。」
このような深刻な話をすると、半端な覚悟で引き伸ばしをしている場合は、大抵、素直に返済を継続してゆくようになります。
また、もし、本当に病気で仕事もままならず、どこからの援助も見込めないのであれば、実際に、自己破産などの手続きを取ってもらうほかありません。
●顧客C(既婚男性50歳)の場合
Cのように、威嚇して、返済をごまかそうというタイプは、まともに相手をしないことです。
こちらもムキになって言い返せば、それこそ相手の思うつぼで、相手に怒って返済をしない口実を与えてしまうだけです。
「そうですか。では、とりあえずは明日まで待たしてもらいます。明日は返済できることを期待しています。」
など適当に話をつけて、早々に話を打ち切ってください。
このようなタイプは、結局、自分のペースでしか返済をしない人達です。
そのため必要以上にお客と揉めなくても、そのうち返済がなされることがほとんどです。
この場合は、遅れながらも、返済があればよしとしておきます。
しかし、もし、遅延が続くようであれば、
- 内容証明通知を発送する
- 訴訟提起をする
など、別のアプローチを検討すべきでしょう。
ただ、私とて人間です。粗暴な物言いをされれば、カチンとくることもあります。
そんな時はあえて挑発に乗って、こう言い返したものでした。
「ああそうですか。私はこれまでアンタのことを、何だかんだと約束は守る立派な男だと思ってきましたが、そのアンタが言うんだな。金がないから少しも払えないって。」
取り立て交渉は奥が深い
このように、消費者金融(特に中小消費者金融)の取り立て業務はなかなか奥が深く、その時々、相手に合わせて、対応を変幻自在に変えてゆくことが必要なのです。
ちなみに、ここで紹介した対応は、あくまで、私の経験と感覚に基づいた、私なりの正解で、自称、「トッププロ?」の話術です。
そのため、私と性格も考え方も違う方が、これを用いても、何かぎこちないものになってしまうでしょう。
最終的には、各消費者金融の回収担当が、それぞれ創意工夫を凝らして、自分なりのスタイルを見つけてゆく他ないのです。