現金よりローンがお得な本当の理由
皆さんは、ある程度高額な買い物をするときに、現金一括で清算するタイプでしょうか、それともローンを組みたいタイプでしょうか。
自分自身のことをいえば、私もかつては、バリバリの現金一括派でした。
やたらとローンを組むことに抵抗がありましたし、何よりも分割手数料がもったいないと感じていたからです。
しかし、こんな私が、金融関係の仕事をしてからは、完全にローン推奨派にくら替えとなりました。
否、今では、ある種の条件においては、ローンを組んでいたほうが、キャッシュで清算するよりも、圧倒的に有利だと断言することができます。
では、バリバリの現金派であった私が、どうしてローンを推奨するようになったのでしょうか。
今回、それがよくわかるエピソードを紹介したいと思います。
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クーリングオフが過ぎても契約を取り消すことができる!?
かれこれ10年近く前のことですが、私はある友人から相談を受けました。
その友人は当時、一人暮らしをしていましたが、あるとき、「〇〇社からの委託で、布団のクリーニングを無料でやらせてもらっています。」という業者の訪問をうけて、ついつい、家にあげてしまったそうです。
そして布団を一通り見た業者から、「この布団は、カビが進行していて、このまま使いつづけると、気管支喘息などになりかねません。」などと脅されて、ついつい総額50万円以上もする高級羽毛布団セットのローンを組んでしまったらしいのです。
やっと我に返ったときには、既にクーリングオフ期間の8日間も過ぎており、格安アパート住まいの独身男性には、不釣り合いな高級布団を替えの分も合わせて3セットと、多額のローンが残ってしまいました。
よくよく考えたら、元々使っていた布団にカビが生えているというのも怪しいものです。
また、業者に問い合わせをしても、「今さら解約はできない」と言われて全く取り合ってもらえません。
困り果てた、友人は、金融業界での勤務経験の長い私に相談してきたというわけでした。
このような販売手法は、悪質な訪問販売業者が、よく使う手口です。
それにしても、なんとも古典的な手口に引っかかったものですが、唯一の救いだったのは、キャッシュで支払いをせずに、ローンを組んでいたことでした。
「よかったな、ローンを組んでおいて。現金で支払っていたら、正直、取り返すのは難しかったけど、ローンを組んでいるなら何とかなると思うぞ。」
私は友人に次のようなアドバイスをしました。
①ローン会社(信販会社)に支払い停止を申し出る
今回のケースのように、訪問販売業者が、布団の無料クリーニングという名目で、相手を訪ねるのは、「勧誘目的の不明示」という違反行為です。
また、独身の男性に一気に3セットも布団を売るのも、日常生活で必要とされる分量を明らかに超えており、「過量販売」という禁止行為にあたります。
このような場合は、クーリングオフ期間が過ぎていても契約を取り消すことができますが、まずは、そのことをローン会社へ申し出て、支払いを一旦停止してもらうようにすすめました。(このことを「支払い停止の抗弁」と言います。)
②消費生活センターや国民生活センターに相談する
前述したように、今回のような場合は、クーリングオフ期間が過ぎていても契約を取り消すことができます。
しかし、そのような交渉を法律知識のない方が、販売店やローン会社を相手に交渉するのは、正直、ちょっと難しいかもしれません。
そのため友人には、全国各地にある消費生活センターや国民生活センターに相談することを勧めました。
これらのセンターに相談すれば、なんと無料で、相談員が、本人の代わりに、販売店やローン会社と交渉もしてくれますし、また、前述の「支払い停止の抗弁書」の作成の仕方も教えてくれます。
これは使わない手はありません。
信販会社は消費生活センターからの心証を悪くしたくないので、多くの場合、消費者保護の名の下に、速やかにクレジットの解約に応じてくれます。
かくして、このような対応が功を奏し、その友人はなんとか契約を取り消すができました。
ローンを組んでいたからこそ取り消すことができた!?
このように契約を取り消すことができたのは、友人がローンを組んでいたことが大きく影響しています。
もちろん、ローンを組んでいなかったとしても、不適切な勧誘などは禁止されていますが、いくらお客側が、そのような行為があったと主張しても、販売店側は、そんなことはやっていないと、否認するに決まっています。
そうした場合、本当にそのような行為が行われていたかどうかを証明するのは至難の業で、やった、やっていないで、話は平行線のまま、解決はなかなかつかないことになってしまいます。
しかし、ローンを組んでいた場合は、ローン会社から販売店に圧力をかけてもらうことができます。
ローン会社はこのようなお客の苦情に対して、適切に対応していないと、最悪、営業停止などの重い行政処分をくらいかねません。
そのため、現実的には、多少、お客側の言いがかりのような苦情内容であっても、ローン会社は、販売店に対して、取引停止をちらつかせて、速やかに解約するようにプレッシャーをかけてくれるというわけなのです。
はれのひ事件の例
もう一つ例をあげましょう。
2018年の1月の成人式の日に、着物の販売やレンタルを手掛ける「はれのひ」という会社が、突如、営業停止となり、予約をしていた新成人の方が、着物を着られなくなってしまったという事件がありました。
このことは報道でも大きく取り上げられて、一時、社会問題のようになったので、記憶にある方も多いと思います。
着物の代金は、一人あたり、30万円から90万円ほどだったようですが、この場合も、ローンを組んでいた方は、「支払い停止の抗弁」を主張することで、ローンの返済を止めることができました。
また、それどころか、既に支払い済の金額の返金にも応じたローン会社が多くありました。
しかし、現金で清算していた方は、残念ながら、支払ったお金は戻ってくることはありませんでした。
ローンを組んだほうが良いケースとは
このように、ローンを組んでいることで、後々、トラブルが起きた際に、解約、返金が非常に受けやすくなります。
特に、以下のようなケースはローンを組んでおくメリットが大きいといえます。
- 何らかの勧誘を受けて商品の購入をする場合
- 商品の受け渡しややサービスの提供が代金の支払いよりも後になってしまう場合
もちろんローンを組むと分割金手数料がかかってしまうので、その金額とのバランスを考えてどうするのか決めることが重要になります。
ただ、最近は、分割金手数料は販売店が負担するというスタイルで営業している会社も珍しくはありません。
このような場合は、現金一括ではなく、ローンを選択しておくことを強くおすすめしておきます。