銀行カードローン拡大の問題点
銀行カードローンの貸付残高が消費者金融の個人向け無担保貸付残高を上回るようになった中、今度は新たな問題が懸念されています。
ここ数年、消費者金融に代わる受け皿として、右肩上がりで成長してきた銀行カードローンですが、どうやら雲行きが怪しくなってきたようです。
(2015年10月5日)
ついに銀行カードローンが消費者金融を上回る
銀行カードローンは、消費者金融が、過払い金返還請求の増加、法改正による金利の引き下げ、総量規制の導入などの逆風により縮小路線を余儀なくされる中、それに取って代わる受け皿として急成長してきました。
その銀行カードローンですが、日銀の統計によれば2015年3月、ついに消費者金融など貸金業者の消費者向け無担保貸付残高を上回ったとのことです。
(銀行カードローンは4.6兆円、貸金業者消費者向け無担保は4兆円)
2010年に貸金業法が改正され、消費者金融が厳しく規制されるようになったため、遅かれ早かれこうなる流れではありました。
銀行カードローンに総量規制が導入されなかった理由
銀行カードローンが残高を伸ばしてきた要因のひとつに、銀行カードローンには年収の3分の1を超える貸出し制限(総量規制)が導入されていないということがあります。
銀行カードローンは貸金業法ではなく、銀行法が適用され、銀行法には総量規制が導入されていないからです。
なぜ、銀行法に総量規制が導入されないかといえば、そもそも行政に次のような偏見があったからに他なりません。
- 消費者金融=高金利と過酷な取り立てで多重債務を生む元凶
- 銀行カードローン=健全な審査で社会問題とは無縁の存在
消費者金融も銀行カードローンも、キャッシング商品の中身はほぼ同じであるのに、なんだか理不尽で矛盾しているようにも思えます。
新たな多重債務問題を懸念
このように、現在、銀行カードローンの一人勝ちのような状態が続いていますが、2015年8月16日付のサンデー毎日では「貸金業者上回る伸びに懸念も、規制枠外の銀行カードローン」というタイトルの記事を掲載し、現在の状況に警鐘を鳴らしています。
すなわち、銀行カードローンを元凶とする多重債務問題が発生しかねないということです。
現在、多くの消費者金融が銀行の資本傘下に入っていて、銀行カードローンの保証業務を行っています。
そのような中、銀行カードローンと貸金業者の貸付けを名寄せすれば、個人の貸付残高が総量規制を超える債務者もでてくる懸念があるということです。
銀行も加わった、新たな多重債務者問題が発生しないように、慎重な対応を望みたいところです。
(一部記事、月刊消費者信用2015年10月号より抜粋)
※追記
2016年12月14日の日本経済新聞記事によると、「金融庁は消費者ローンを巡る銀行融資を問題視しており、銀行による過剰な貸し出しや過度な宣伝がないか調査を始めた。」とのことです。
「総量規制」の導入によって、「多重債務者」は、2006年度末で171万人であったものが、2016年10月末で9万人と、大幅に減少しました。
その一方、法改正後は、総量規制の適用がない、「銀行カードローン」が増加しており、2016年10月12日には、日本弁護士連合会によって、銀行カードローンによる過剰貸付防止を求める意見書が金融庁に提出されています。
また、2016年12月13日に金融庁が開いた多重債務問題の有識者会議では、委員から「銀行によるローンが重なっても危険な状況になる」と過剰な貸出しを懸念する指摘もありました。
このような流れを受けて、金融庁は銀行によるカードローンの融資実態の調査を開始し、融資の審査手法や、行き過ぎた宣伝がないかなどを調べているとのことです。