消費者金融の反社会的勢力排除への取り組み
「反社会的勢力の排除」というワードはここ数年急に大きく取りざたされるようになりましたが、それにはきっかとなったある事件がありました
ここでは、そのきっかけとなった事件を振り返りながら消費者金融の反社対応について解説していきたいと思います。
(2014年7月11日)
Contents
反社対応ブームの火付け役の事件とは
平成25年9月、金融庁はみずほ銀行に対して業務改善命令を出しました。
みずほ銀行は大手信販会社オリコとの提携ローンを通じて、「反社会的勢力」と定義される暴力団らに融資しており、また平成22年時点で反社会的勢力との取引が行われていることを把握していたにも関わらず、実質2年以上その根本的な対応を取っていなかったことが原因です。
この問題をきっかけに「反社会的勢力排除」というワードは日本企業全体で大きく取りざたされるようなりました。
これを受けて消費者金融業界でも新たな反社会的勢力排除に関する取り組みが開始されました。
反社排除の取り組み内容
●監督指針、自主規制規則が改定された
平成26年6月に、「貸金業向けの総合的な監督指針」、「貸金業の業務運営に関する自主規制基本規則」、「業務の適正な運営に関する社内規則策定にあたっての細則」などが改正され、反社会的勢力排除に関する項目が強化されました。
●特定情報照会サービスの提供が開始予定
反社会的勢力排除を目的として、「日本貸金業協会」と貸金業の指定信用情報機関にあたる「㈱日本信用情報機構(通称:JICC)」とが連携して「特定情報照会サービス」の提供をスタートさせます。
これは、全国暴力追放運動推進センターなどから反社情報の提供を受けて、反社会的勢力に関するデータベースを作成し、㈱日本信用情報機構(通称:JICC)を通して照会、照合ができるようなサービスです。
消費者金融業者はこのサービスを利用することで、入口の段階で反社会的勢力を排除することが可能になります。
このサービスは日本貸金業協会より、各業者に向けて平成26年7月22日から受付を開始するとあります。
このように、業界全体の問題として反社会的勢力排除に向けての新たな取り組みが開始されつつありますが、既存顧客に対しての反社会的勢力か否かの確認についてなど実際の運用に関しての課題は残ります。
⇒その後、日本貸金業協会に加入をしている消費者金融会社には、特定情報照会サービスを利用した反社チェックを、既存顧客も含めて、1年に1回ほど行うことが求められるようになりました。
また、反社会的勢力として融資を断わる場合などはかなりデリケートな取り扱いが求められると思われ、照合データの信憑性も含め、どのような運用をしてゆくのかなかなか難しい部分もあります。
特定情報照会についてもう少しだけ
反社会的勢力排除に関する取組は、前述したように、平成25年の、みずほ銀行、オリコの事件以来、世の中で急に注目されることになった項目です。
この特定情報照会サービスも、業界が、行政より突然、反社対応を求められるようになったので、急ごしらえで作ったシステムという感は否めません。
新規取引顧客に対しては、融資の都度、特定情報照会サービスを利用して、反社チェックを行えますが、既存顧客に対してのチェックは消費者金融業者にとっては、かなり負担を強いられることになります。
(データを利用して一括で反社チェックを行うシステムなどもあるようですが、ある程度の件数を抱えている大手にしか対応できていません。中小業者は、手作業で照会をすることとなり、大きな負担がかかることになります。)
また、日本貸金業協会に未加入の消費者金融会社は、特定情報照会サービスの利用ができないので、自社で収集した情報で反社チェックを行わなければなりませんが、特定情報照会サービスと同等レベルの反社情報を収集することは、現実的には不可能と言えるでしょう。
(日本貸金業協会への加入率は平成26年3月時点で、59.0%であり、正規登録会社の40%以上の会社が未加入業者ということになっています。しかし、今後、行政が、各消費者金融会社に対して、厳格な反社対応を求めることで、日本貸金業協会へ加入せざるを得なくなり、加入率が上がるきっかけになるかもしれません。)
ちなみに、「特定情報照会サービス」は、前述したように、「日本貸金業協会」と「㈱日本信用情報機構(通称:JICC)」が連携して提供しているサービスで、消費者金融は主にこのサービスを利用していますが、「日本クレジット協会」と㈱シー・アイ・シー(通称:CIC)が連携して提供している反社データベース照会サービスに、「CSRS」というサービスがあります。
どちらも同じ反社情報照会サービスで、趣旨は一緒です。(クレジット会社や信販会社のほとんどは、主にCSRSを利用しています。)