イマドキの中小消費者金融の審査
さて、これから皆さんは「中小消費者金融の審査」について学んでゆくわけですが、最初に言っておかねばならぬことは、「中小消費者金融の審査」は「大手消費者金融の審査」とは、同じ消費者金融でありながら全く違うものだということです。
初めて消費者金融を利用する申込客が多い大手と違い、中小消費者金融の申込客は、既に大手で断られたリスクが高いと言われる人達が中心です。
しかし、このような申込客を断ってばかりいては商売になりません。
そんな中でも審査や貸付の方法を様々に工夫して積極的に融資を行っているわけです。
では、そんなイマドキの中小消費者金融の審査について徹底解説していきます。
Contents
大手消費者金融と何が違うのか
冒頭で述べたように、大手消費者金融と中小消費者金融では、同じ貸金業であっても、顧客層、審査手法、ひいては経営哲学まで、その文化は全く異なったものになっています。
中小消費者金融と上手に付き合うためには、まずは、中小業者ならではの特徴を理解することが必要です。
ここでは大手業者と中小業者の違いについて、まとめてみました。
●大手は性善説・中小は性悪説
①大手業者の顧客層は「マジョリティ(多数派)」
大多数の人は、特に厳しい督促などされなくても返済をきちんと履行します。
また、住所、勤務先、年収額など、審査に必要な情報についても、特に、「在籍確認」や「書面の提出」などで裏付けを取らなくても、大多数の人は正直に申告します。
中には、虚偽申告をする人も一定数発生しますが、全体から見ればごく少数なので、それらの防止にやたらコストをかけるのは、効率がよいことではありません。
もちろん、大手でも、「在籍確認」や「書面の提出」などは行われていますが、それは、限定的なもので、基本的には「本人申告」が重視されています。
たとえば、大手業者は、50万円までの融資であれば、収入証明等の提出書類を不要としている会社がほとんどです。
その場合、本人が年収300万円と言えば、年収300万円として、500万円と言えば、500万円として、「本人申告」に基づいて審査が行われることになります。
(負債額の調査については、指定信用情報機関での調査が義務付けられているので、大手でも行われます。)
②中小業者の顧客層は「マイノリティ(少数派)」
対して、中小業者の顧客層は、何らかの事情で大手業者での利用が出来なくなった人になります。
このため、その多くは、「多重債務」、「自己破産・債務整理」、「延滞」など、何らかの金融トラブルを抱えた人になります。
本来、このような層への融資は、業者にとっても非常にハイリスクなことです。
大手のように、本人申告を鵜呑みにして融資をしていたら、不良債権が山積みされることになってしまいます。
このため、「在籍確認」、「書面の提出」などできちんと裏付けを取り、ヒアリングなどを行い、優良顧客を選別して融資を行っています。
また、金融トラブルを抱えた顧客が多い分、延滞時の督促行為も大手のそれより厳しい内容になりがちです。
●大手の審査は画一的・中小は主観重視
①大手業者の審査は画一的
大手業者の審査は、コンピューターを利用した、オートスコアリングシステムが利用されています。よって、基本的には、誰が審査をしても、同じような審査結果が出るようになっています。
コンピューターによって一定の基準を設けているので、人間の主観や思い込みが極力排除され、審査結果にムラが生じにくくなっているわけです。
大手では、このようなコンピューター審査によって、画一的な審査が可能になっており、審査基準のコントロールを行うことも容易になっています。
②中小業者の審査は主観・感覚重視
対して、中小業者の審査は、一定の審査基準はあるものの、ヒアリングによる選別もあり、各担当者や決裁者の主観や感覚に左右されることが多くなります。
このため、審査結果には、ムラが生じやすく、画一的な審査はなかなか望めません。
もちろん、誰がどう見ても、融資可能な内容や融資不可能な内容の審査結果は変わらないでしょうが、微妙な内容の申込みは、審査する担当者によって、審査結果が変わってしまうことは多々あります。
しかし、主観・感覚重視のため、思わぬ可決や高額融資の決裁が出ることもあるので、利用者からすれば悪いことばかりではないようです。
●風評重視か利益重視か
①大手業者が重視するもの
会社の規模が大きくなれば、社会や世の中に与える影響も大きくなり、いわゆる「社会的責任」、「社会的な役割」という大義を持った経営が求められるようになります。
たとえ、一時的に儲かったとしても、社会的な正義がないことや、道義に反するような経営は、世の中から叩かれるので、なかなか生き残ることはできないのです。
仮に、企業に全く落ち度がないような場合でも、消費者保護、弱者保護の観点から、企業側が折れた方が得策ということはどの業界でもあります。
このため、大手業者では、天災、人災、入院などの大義名分があれば、かなりの期間、利息を凍結して返済猶予してもらうことが可能となることもあります。
②中小業者が重視するもの
もちろん、大手に限らず、中小業者にも社会的責任は求められています。
しかし、中小業者には、大手ほどの資金力もありませんし、社会に対する影響力もありません。そのような中、きれいごとではなく、目の前の利益を追求することもかなり重要な仕事です。
もちろん、中小業者も消費者保護の観点を持って経営をしていますが、企業に全く落ち度がなければ、みすみす損を被るようなこはしないのが普通です。
そのため、利息凍結などには応じてくれません。
●承認率の違い
会社によって多少の差はありますが、CMなどで有名な大手消費者金融の可決率(承認率)はおよそ50%弱です。
これに対して、中小規模の消費者金融の可決率(承認率)は10%弱と低い数値になっています。
中小消費者金融では、かなり積極的に貸出しを行っている会社でも、アベレージで10%を超えてくる会社はなかなかありません。
通常、中小規模の消費者金融には大手で利用が出来なかった方が申込みをされるので、承認率が低下するのもやむを得ないでしょう。
●中小消費者金融の申込みは大手が否決になってから
このように。中小消費者金融は、大手とは違った特徴があるわけですが、初めて消費者金融を利用するという方であれば、サービスが充実している大手から申込みをするべきです。
中小消費者金融の利用を検討するのは、大手3社から否決されてからで大丈夫です。
イマドキはWEB申込みが主流
中小消費者金融への申込み方法は、大手消費者金融と同様、時代の流れによって著しく変化してきました。
これまでの経緯をざっと見ていきましょう。
●1990年代前半まで
かつて消費者金融が「サラ金」と呼ばれていた当時は、お客が店舗の窓口まで出向いて借入れするというのが一般的でした。
貸す側と借りる側がひざをつき合わせて、じっくり話し込んで、時には説教を受けながら借入れするという昔ながらの対面審査が主流でした。
●1990年代半ば以降
1993年のアコムの「むじんくん」のヒットにあやかり、各消費者金融はユニークな名前をつけた無人契約機を導入し無人化を競うようになしました。
これは中小消費者金融も例外ではありませんでした。
●イマドキは
イマドキは、どこにも出かけず、誰にも会わずに自宅に居ながらにしてお金を借りることができる、ネットからのWEB申込みが主流です。
このように見ず知らずの他人に面談することもなくお金を貸すことは、ひと昔前の感覚では考えられないことですが、中小消費者金融も企業努力の結果、対面審査を完全克服して、ネットから申込みをして、一切面談をせずに融資するという会社が増えてきました。
この傾向は、スマートフォンの普及によりさらに大きくなってきています。
WEB申込みが承認率を下げた!?
このように、一昔前の消費者金融は、「来店融資」が主流でしたが、現在は、大手から中小まで、ほとんどの消費者金融が、「来店不要のWEB申込み」を採用しています。
このWEB申込みが浸透したおかげで、消費者金融は、より多くの顧客に効率よく貸出しを行えるようになりました。
しかし、このような申込者と面談をしないで融資を行う方法は、
- 属性と負債状況のみの審査に偏ってしまう可能性が高い
- 偽造、なりすまし等、詐欺の申込みが増加しやすい
など、消費者金融にとっても、ある程度の不良債権発生リスクは伴うことになります。
元々リスクの高い客層の中小消費者金融であれば尚更です。
そのため中小消費者金融は、「新規申込み客」の審査に対して、かなり慎重になっており、結果、大量の申込みに対応出来るようにはなりましたが、新規の承認率は、10%以下、融資金額も10万円程度の低いものになってしまいました。
ただし、その反面、過去に利用実績のある顧客に対しての審査は、かなり甘くなっているのも事実です。
(先ほど述べたように、現在、中小消費者金融での新規利用の承認率は10%以下ですが、再度の利用の可決率は、50%を超えるものになります。)
また、
「新規で利用した時は10万円しか利用できなかったが、再度の利用をした時は50万円の利用ができた。」
などの話は良く聞きます。 このように中小消費者金融の審査は実績重視なのです。
中小消費者金融の審査は甘いのか
インターネット上では、「審査が甘い」とか「無審査」という表現で、中小消費者金融を紹介しているサイトをよく見かけます。
そのため、中小消費者金融の審査は甘いと勘違いしている人も多いのではないでしょうか。
しかし、本当に「審査が甘い」とか「無審査」の会社はあるのでしょうか。
①無審査はありえない
いくら中小消費者金融といえ、正規登録会社である限り無審査ということは絶対にあり得ません。
消費者金融は法律で、厳格な返済能力調査を行うことが義務付けられているからです。
貸金業法の基準の範囲内で、審査が甘い、厳しいということはあっても、「無審査」は絶対にあり得ません。
②自己破産、債務整理経験者への融資はマスト
ひと昔前は、たとえ中小消費者金融であっても自己破産や債務整理経験者への融資は敬遠されていました。
しかし最近では、過去にそのような経緯があっても現時点での支払能力があれば融資対象としている会社が増えてきました。
否、むしろイマドキの中小消費者金融では自己破産や債務整理経験者への融資はマストです。
どうやらこのような融資を行っていることが、「審査が甘い」という誤解につながっているようです。
③他社延滞はNG
中小消費者金は審査が甘いから他社延滞が多少あっても借入れできると勘違いしている人がいます。
しかしイマドキの審査でも、「現在他社延滞中」は絶対的にNGです。
微妙なのは、「過去の他社延滞」です。
このさじ加減は業者や担当者によって変わってきます。
強いて言えば、このさじ加減の差が、審査が甘いか否かということになるのでしょう。
④安定性は重視される
居住年数、勤続年数、雇用形態は安定性を計る大事なポイントです。
一般的な中小消費者金融の場合、居住年数、勤続年数は共に1年以上あれば安心ですが、それ以下をどこまで拾うかの基準は業者によって変わってきます。
(全くの無職無収入はもちろん絶対NGです)
また、雇用形態は他の属性に絡めて判断されるケースが多いようです。
(例えばアルバイトの場合は、居住年数、勤続年数共に長い場合のみ拾うとか、本人以外に主たる生計維持者がいる場合のみ拾うなど、他の属性に絡めた条件付けをしているケースが多い。)
これらの各社の差が、審査が甘いか否かということになるのでしょう。
仮審査(一次審査)と本審査(二次審査)
さて、ここからは実際の中小消費者金融の審査の流れを見ていきましょう。
中小消費者金融の審査は、いわゆる「仮審査(一次審査)」と「本審査(二次審査)」の二段階に分けて行われる場合がほとんどです。
大まかなイメージとしては、以下のようなものです。
- 仮審査(一次審査)
・・属性審査と信用情報機関での返済能力調査 - 本審査(二次審査)
・・各種書類提出、在籍確認、ヒアリングなど
就職の面接に例えるなら、仮審査は履歴書だけの書類選考。本審査は面談といったところでしょうか。
ではそれぞれ解説していきます。
●仮審査(一次審査)について
※属性審査
申込みフォームから、申込みがあれば、まずは、属性審査が行われます。
属性審査とは、大きく以下の2種類に分かれます。
- 過去、現在の利用者ではないか、または過去に申込みがあった客ではないかの確認
- 審査受付基準を満たしているかの確認
①の作業は自社システムのデータベースと照合して、同一人物ではないか確認を取ります。
②の作業は、各会社によって、基準が異なっています。
たとえば、
- 年収額100万円以下は審査対象としない
- 水商売は審査しない
- 勤続年数3カ月未満は審査しない
など、各会社が審査マニュアルなどで取り決めた基準で、スクリーニング(ふるいわけ)をすることになります。
この基準については、各社、公表していませんし、随時、見直しされているので、時代に合わせて変化していっています。
※返済能力調査
ふるいわけに残った申込みは、指定信用情報機関に照会され、他社の借入額や返済状況をチェックされることになります。
具体的には以下のような内容であれば、否決となってしまう可能性が高くなります。
- 総量規制対象(借入れ額が年収の3分の1を超えている)
- 「延滞」、「債権回収」などの事故情報が発生している
- 1年以内に著しい頻度や日数の返済遅延がある
- 総量規制の範囲内だがその他のローンも合わせて負債額が多い
近年の中小消費者金融は、過去に自己破産や債務整理をした方でも審査対象としている会社は多いので、そのような情報が発生していても問題はないでしょう。
ちなみにこの仮審査(一次審査)を通過する人は、申込者全体の30%ほどの人しかいないようです。
●本審査(二次審査)について
仮審査が通過すれば、消費者金融から通知や連絡が入り、本審査へ移行することになります。
※各種書類提出
本人確認書類、収入証明など各種書類の提出を求められます。
(消費者金融によっては、申込み内容を申込みフォームに入力する際、あわせて提出を求めている会社もあります。)
提出方法は、画像をアップロード、またはメール、FAXなどでも対応しています。
ポイントは、免許証、保険証など本人確認書類の提出は、どこの会社も必須ですが、収入証明は必須としていない会社もあるということです。
具体的には、「自社からの貸付金額が50万円以内で、複数の貸金業者からの貸付け合計金額が100万円以内」の場合は、消費者金融も収入証明を徴求する義務はないので、不要としている会社もあります。
(但し、貸付金額によらず、一律徴求している会社もあります。)
※在籍確認
在籍確認は、原則、
- 携帯電話
- 自宅固定電話
- 勤務先電話
でそれぞれ行われます。
但し、最近は自宅に固定電話がなかったり、勤務先での在籍確認が個人情報の関係で取れなかったりするケースも増えてきています。
そのような場合は、公共料金明細など居住を証明出来る書類や、給料明細などの提出を求められるケースもあります。
また、在籍確認で心配なことは、家族や同僚にバレてしまうことがないかということでしょう。
一応、消費者金融も個人名で電話をするよう配慮していますが、いきなり、自宅や勤務先に知らない人から電話がかかってくるのも不自然です。
この辺りは、電話をする時間帯など含め、消費者金融の担当とよく相談しておいた方がよいでしょう。
※ヒアリング
消費者金融によっては、申込みフォームに入力した簡易な内容だけではなく、細かな生活状況を直接確認して、最終審査をしている会社があります。
これは、一見、面倒に思えるかもしれませんが、申込者にとってはチャンスでもあります。
通常、ヒアリングが行われるのは、属性審査や返済能力調査なども通過している、最終段階です。
よほどの悪印象を与えるか、思わぬ悪条件が判明しない限り、通過することがほとんどです。
逆に、先方担当と直接、話が出来る機会に、上手く先方の信頼を勝ち取れば、思わぬ限度額UPの決裁が出ることだって十分、有り得ます。
中小消費者金融の審査の必勝法とは
さてここまで、中小消費者金融の審査の概要について解説してきましたが、最後に皆さんに伝えておきたいことがあります。
それは、キャッシング審査には、可決の可能性を高める方法はあっても、絶対に可決にする完全な必勝法など所詮はないということです。
特に中小消費者金融の審査は、流動的かつ、審査ムラが大きく、なかなか完全に攻略することは困難なのです。
中小消費者金融の審査基準はその時々の状況によって変化します。
原因は様々ですが、例えば下記のようなものがあります。
- 不良債権の発生率
- 調達資金の具合
- 広告宣伝予算の具合
- 会社の経営方針
また、大手消費者金融の審査は、コンピューターを用いた自動審査(オートスコアリングシステム)ですが、中小消費者金融の場合、マンパワーによる審査がまだまだ主流です。
そのため、同じ会社なのに各担当者によって、審査基準が多少違うということはよくあることです。
このため、その時の消費者金融の状況や担当者によって、全く同じ条件の方が申込みをしても、片方は可決、片方は否決ということも実際に起こり得ます。
このような部分はあまり追及してもどうしようもありません。
もし審査に落ちるようなことがあっても、縁がなかったと気持ちを切り替え、割り切って次の申込み先を探すことも重要なのです。