「人間性」重視の審査とは
私は、これまで数多くの中小消費者金融の審査担当者と話をしてきましたが、その全員が口をそろえて審査で重視していると言っていたことがありました。
それは、「お客の人間性」です。
これは、中小消費者金融の審査担当であれば、会社が違えど、まず例外なく共通していたので、事実上、審査の最重要ポイントと言っても過言ではありません。
では、ここで言うところの、「人間性」とは、一体どういうものなのでしょうか。
詳しく説明していきましょう。
人間性重視は中小消費者金融のみ
まず、前提として申し上げておきたいのは、「人間性」という、定義の曖昧なものを、重視しているのは、消費者金融の中でも中小消費者金融に限定されるということです。
大手消費者金融や、まして、銀行カードローンの審査において、このようなものを重視しているとは聞いたことがありません。
これには、客層の違いが大きく関係していると思われます。
大手消費者金融や銀行カードローンには、初めてカードローンを利用するような、「一般の方」からの申込みが大多数です。
対して、中小消費者金融の申込みは、既に、大手消費者金融数社から利用があったり、過去に自己破産や債務整理をしたことがあるなど、「やや問題を抱えた方」が中心です。
あえて、言葉を選ばずに言えば、大手に申込みをするような、「一般の方」は、さほど「人間性」などというものを意識しなくても普通に返済してくれますが、中小消費者金融に申込みをしてくる、「やや問題を抱えた方」は、まともに返済してくれない人も多いので、「人間性」の良し悪しを見極める必要があるということです。
二次審査でのヒアリングが超重要
中小消費者金融の審査担当は、どのようにして、申込者の「人間性」を判断しているのでしょうか。
それは、二次審査における「ヒアリング」においてです。
現在、多くの中小消費者金融は、審査の工程に、生活状況の詳細を確認するための「ヒアリング」を設けています。
(参考記事:中小消費者金融の二次審査のポイント)
これは、電話や来店面談で、直接、消費者金融の担当と対話を行う方法で実施されています。
時間にすると、せいぜい10分から20分程度です。
「そんな、10分程度の会話で、その人物の人間性がわかってたまるか!」
そのような、お怒りの意見もあると思いますが、実際にこのようなスタイルで審査が行われているわけなのでどうしようもありません。
多くの中小消費者金融の審査担当が、審査で重視していると言っている以上、最終的には、この「ヒアリング」での印象で審査の合否決まってしまうと言っても、決して過言ではないのです。
しかし、過度に構える必要はありません。
このヒアリングは、合格者を絞り込むためのものではなく、問題がありそうな申込者を除くために行っています。
普通の印象であれば、問題はありません。
逆に言えば、このわずか10分程度の面接のような対話で、相手に悪印象を与えなければよいということなのです。
「人間性が良い」の定義とは
では、審査担当者に悪印象を与える言動とはどのようなものがあるのでしょうか。
わかりやすく言えば、次のようなものがあげられます。
- 横柄で生意気な言動
例)どーでいいけど、早よ、審査してくれや! - 軽薄な言動
例)借金なんて、どーとでもなりますよ! - 一般常識が通用しない
例)まあ、いよいよとなれば、強盗してでも返済しますよ。
まあ、ここまで極端なことを言う人はさすがにいないと思いますが、イメージとしてはこのようなものです。
逆に好印象(「人間性」がよいと判断される)持たれる言動は、これの真逆になります。
すなわち、次のようなことがあげられます。
- 真面目で誠実な言動
- 慎重な言動
- 一般常識を持ち合わせている
要するに、借入れを増やし過ぎず、計画性を持って、借りたものは必ず返済をするという強い返済意志のようなものが伝わればOKだということです。
人間性重視のデメリット
人間性を重視した審査と聞くと、表面的な属性にとらわれることなく、中身を見てくれているといった良いイメージを思い浮かべるかもしれませんが、この審査にもデメリットはあります。
それは、審査担当者の主観が反映しすぎてしまうことです。
これは大手消費者金融の「オートスコアリング」と比較するとよくわかります。
「オートスコアリング」とは、例えば、「持ち家」であれば10点、「賃貸」であれば5点と、コンピューターが申込者の属性に点数をつけていき、その点数で、審査の可否や限度額の目安を決めるシステムです。
客観的事実に基づいて点数を付けているだけなので、ほとんど審査担当者の主観が入る余地はなく、いつ誰が審査をしても安定した決裁を出すことができます。
しかし、中小消費者金融の人間性を重視した審査というのは、いわば、審査担当者の主観で点数付けをしているようなものです。
つまり、審査担当者Aなら可決だが、審査担当者Bなら否決ということが普通に起こり得るということです。
また、同じ担当者であっても、その日の機嫌の良し悪しや、体調、気分などによって審査結果が左右され兼ねません。
かくいう私も、消費者金融で審査担当をしていた時は、つい、その場の勢いで、可決にしてしまったり、否決にしてしまったことは多々あったことを告白しておきます。
このように「人間性重視」の審査は、かなり曖昧なものでもあるのです。
私の恩師の言葉
最後に、私が消費者金融業界に入門した時の店長が言っていた言葉を残しておきます。
中小消費者金融の審査のエッセンスが伝わってくるはずです。
「いいか、大した借り入れ額でもないのに、すぐに債務整理や自己破産をしたがる奴もいれば、どんなに貧乏していても、なんとか踏ん張って、返済を続ける奴もいる。結局はそいつの人間性よ。それを見極めるのが本当の審査ってもんだ。」
中小消費者金融の審査は、まさにこの感覚で成り立っているのです。