コロナ禍での消費者金融のキャッシングを総括
新型コロナウイルス感染症の影響により、ここ1年ほどで、私たちの生活は大きく変化しました。
はたして、今回のコロナ禍は、消費者金融にどのような影響を与えたのでしょうか。
ここでは少し早いですが、コロナ禍での消費者金融のキャッシングを総括していきたいと思います。
(2021年6月7日)
Contents
コロナ禍での申込み状況
まずは、コロナ禍での消費者金融への申込み状況を見ていきましょう。
コロナが全国的に騒がれはじめた、2020年年明けごろ、消費者金融については、「コロナの影響で資金不足になった方の申込みが増えるので、融資残高は伸びるが、逆に不良債権は増加する。」と言われていました。
なるほど、もっともな理論ではありますが、はたして実際はどうだったのでしょうか。
下のグラフは大手消費者金融アコムの申込み件数の推移です。
(他の消費者金融も大手も中小も傾向はおおよそ同じです。)
このグラフからわかるように、コロナ禍の2020年度は、当初の予測に反して、申込み件数は大きく減少しました。
かつて、消費者金融は不況に強いと言われてきましたが、実際のところは、不況により、消費マインドが冷え込めば、それに比例して、申込み件数も減少することが明らかになったのです。
グラフからは、一時期、新規獲得において、かなりのダメージを受けたものの、2020年7月以降は、徐々に回復傾向にあることがわかります。
2021年4月度の結果では、申込み件数は、一昨年の約7%減までもちなおしてきました。
現時点でコロナは終息したわけではありませんが、いわゆる「コロナ慣れ」なのか、人々の消費意欲は確実に回復傾向にあるようです。
このまま順当にいけば、2021年度は、従来通りの申込みに戻ってくると予想されます。
コロナ禍での審査基準
では、コロナ禍での消費者金融の審査基準はどうだったのか見ていきましょう。
①承認率
アコムのデータでも、2020年度は、前年比-2.4%と、承認率はやや下がっています。
※参考(アコム承認率)
●2019年度・・43.6%
●2020年度・・41.2%
しかし、申込み件数が激減する中、承認率は40%以上の数値をキープしており、かなり持ちこたえたほうだともいえます。
②初回貸付額
驚くべきことに、このコロナ禍の中でも、初回貸付額は上がっています。
※参考(アコム初回貸付額)
●2019年度・・16.4万
●2020年度・・17.5万
承認率がやや減少した分、貸付け単価を上げて、融資残高のバランスをとったということでしょうか。
コロナ禍の方が、通常時よりも、高額融資が受けられたという結果がでているのは、興味深いものがあります。
③一部業種に関して審査は厳しくなった
これは、公のデータには出ていませんが、一部業種に関しては、どうしても、審査は厳しくなっていたはずです。
具体的には、
- 水商売
- 個人商店の居酒屋
といった、コロナのあおりをまともに受けた業種の方々です。
消費者金融業も一民間企業なので、先の見通しがなかなか立たない、これらの業種に関しては、どうしても審査基準は厳しくせざるを得ないのです。
コロナ禍での不良債権の状況
不良債権については、コロナ禍では、発生率は高くなってもおかしくないはずです。
しかし、アコムの場合も、残高比率では、やや増加したものの、不良債権自体の額は減っており、かなり抑えられていることがわかります。
※参考(アコム不良債権額)
●2019年度・・60,061百万(期末残高比7.14%)
●2020年度・・59,738百万(期末残高比7.62%)
まして、不良債権への督促の厳しい、中小消費者金融においては、不良債権の発生が、前年度を大きく下回った会社も珍しくはありません。
実は、これは給付金などの政策が大きく影響していると思われます。
政府が国民に一律に10万円を配った、「特別定額給付金」や、売上が下がった自営業者に対する、「持続化給付金」などの影響で、本来であれば、返済不能で、不良債権になっていた人や、倒産していたような個人事業主が延命しているということです。
実際、2020年度は、本来であれば、返済できないような顧客から突然、返済があったという話を、知り合いの金融マンからもよく聞きました。
2021年度は、これら一時的に延命した債権が、不良債権化するリスクは高いので、不良債権の悪化は懸念されています。
まとめ(2021年度はどうなる)
現段階で、コロナ禍は消費者金融業界にとって、さほど悪い影響は与えておりません。
あまり適切な言い回しではないかもしれませんが、全体的には、コロナ禍で、逆に融資が受けやすくなってすらいます。
2021年度、各消費者金融は、コロナ禍で多少なりとも減少した融資残高を補うべく、貸出しを強化してくる可能性が高いと、筆者は見ています。
まして、不良債権の発生が抑えられていますし、「カネ余り」の状態で資金も確保できている会社が多いはずです。
しかし、文中にも記述しましたが、下半期あたりから、コロナ禍で一時的に延命されている不良債権が、徐々に発生しはじめると、審査を絞りはじめる可能性もあり得ます。
申込みのタイミングは早めが狙い目ということになるでしょう。