JICCを利用した審査方法を徹底解説
貸金業法の指定信用情報機関にはJICCとCICの2機関がありますが、消費者金融の審査でより重視されるのはJICC情報です。
これはほとんどの中小消費者金融がJICCには加盟していますが、CICには加盟していないことからも明らかです。
ここでは、そんな、JICCを利用した審査方法に焦点をあてて徹底解説していきたいと思います。
Contents
消費者金融ではCICよりJICCが重視される
消費者金融は、㈱日本信用情報機構(通称:JICC)か、㈱シー・アイ・シー(通称:CIC)のうち、どちらかの機関(または両方の機関)に加盟をしていなければなりませんが、消費者金融を専門で営業している会社には圧倒的にJICCの方が好まれています。
それは、JICCとCICでは返済履歴の表示内容が異なっており、キャッシング審査においては、JICCの表示内容の方が、有益な情報が多く、圧倒的に利用しやすいからです。
それぞれの返済履歴の表示内容を下にまとめてみました。
●JICCの返済履歴の表示
JICCでは、過去12回分の返済状況を、遅れた日数で表示しています。 具体的には以下のようなイメージです。
※この図では、6回前の返済時には5日延滞、10回前には10日延滞、11回前には20日延滞があったことがわかります。
このため、申込者が、過去どのくらい遅れがあったのかは、一目瞭然になっています。
●CICの返済履歴の表示
対して、CICでは、過去24回分の返済状況が、記号で表示されています。
一見、24回分のCICの方が、情報量が多いようにも見えますが、CICの場合はあくまで記号表記になっていて遅れた日数まではわかりません。
代表的な記号は次のようなものです。
$・・請求額の入金がある
A・・未入金
P・・請求額の一部入金
具体的なイメージは以下のようになります。
※この図からは、4回前の返済時には、一部入金、5回前の返済では未入金でしたが、それ以外は次回返済日が到来する前に請求額の返済はあったということがわかります。
要するに、JICCは延滞した日数を表示しているのに対して、CICでは具体的な日数表示がされていないのです。
また、CICでは、次回返済期日が到来する前に、前回支払い相当分を入金すれば、表示される結果は「$」となり、結果、延滞していない人と変わらない表示になるのです。
JICCはキャッシング向け、CICはショッピング向け
このような違いがあるのは、もともとは、JICCはキャッシング向け、CICはクレジットカードなどの買い物のローン(ショッピングローン)向けの情報機関だからです。
キャッシングは日次単位のスタンスですが、ショッピングローンは月次単位のスタンスです。
ショッピングローンの審査では、過去の返済状況に対して、1日単位で遅れた日数表示がなくても、次回返済期日までの月単位での遅れた情報があれば十分とされています。
しかし、キャッシングでは、月単位ではなく、1日単位での遅れた情報が重視されます。
これは、キャッシングとショッピングローンとの、利用顧客の層の違いからきています。
現金を直接借りたい人と、買物代金をカードやクレジットで支払いする人の客層の違いということです。
これらを比較すると、どうしても、現金を借りたい人の方が、買い物する人よりも資金繰りに苦しんでいる傾向が高くなります。
つまり、金融業者にとっては、キャッシングの方が、リスクが高い顧客層になるのです。
このため、キャッシング審査では、延滞についても1日単位というシビアな目線で見ているのです。
※参考情報
●銀行カードローンの信用情報機関へ報告について
先ほど、
・キャッシング・・日次単位
・ショッピング・・月次単位
と説明しましたが、正確にはキャッシングの中でも、「銀行カードローン」は、信用情報機関への報告は、日次ではなく、月次でした。
しかし、2019年3月30日の報道によると、このたび、全国銀行協会が、多重債務者増加防止の一環として、2021年度中には、信用情報機関への報告を消費者金融と同様に毎日更新にする方向で調整しているようです。
銀行カードローンが日次報告となれば、残高の把握はもちろん、支払い遅れについても、リアルタイムで把握できるようになるので、より審査の精度が上がるというわけです。
JICCはファイルDとファイルMで構成されている
JICC情報は、大別すると、「ファイルD」と「ファイルM」という2種類のファイルで構成されています。
両者の違いは、
●ファイルD
主にキャッシング情報のファイル
(消費者金融からのキャッシング、銀行からのキャッシング)
●ファイルM
主にクレジット情報のファイル
(クレジットカードなどのショッピングローン、住宅ローン、マイカーローン、スマートフォンのローン等)
といったイメージです。
もう少し詳しく説明していきましょう。
●ファイルD情報
キャッシング審査で主要となるのは、やはりキャッシング状況が掲載されている、「ファイルD」です。
ファイルD情報はさらにその中で、総量規制対象と対象外の借入れの2種類に分類されています。
大まかに以下のようなイメージです。
- 総量規制対象:消費者金融などの貸金業者からのキャッシングなど
- 総量規制対象外:銀行カードローンのキャッシングなど
また、このファイルDの内、消費者金融など貸金業者からの借入れについては、JICCとCICは情報交流を行っています。
情報交流をしているということは、JICCに未加入だが、CICにだけ加入している業者からの借入れもJICC情報に掲載されるということです。
そのためファイルDには、貸金業者からの借入れは、ほぼ全てが網羅されているというスタイルになっています。
●ファイルM情報
ファイルM情報は、主に、クレジットカードなどのショッピングローンなどクレジットの情報です。
しかし、全てのショッピングローンの情報が網羅されているわけではありません。
JICCは割賦販売法に基づく指定信用情報機関ではないからです。
ショッピングローンなど割賦販売法に基づくローンの指定信用情報機関はCICになります。
そのため、ショッピングローンの取り扱いを行っている信販会社やクレジット会社は、CICに加盟する必要はあってもJICCに加盟する必要はないのです。
ファイルMに掲載されているショッピングローンの情報は、あくまでJICCに加盟している信販会社やクレジット会社だけの情報で、JICCに加盟していない信販、クレジット会社からの情報は原則、掲載されていません。
また、入金などの情報更新も、ファイルDの貸金業者からの借入れ情報が、日次更新(毎日更新)なのに対して、ファイルMは、月次更新(毎月1回)の更新なので、リアルタイムの情報ではありません。
●審査ではファイルDが重視される
このように、キャッシングの審査において、他社でのキャッシング情報は、ほぼ全ての借入れが網羅され、情報も日々更新していますが、ショッピングローンなどの情報は、全ての借入れが網羅されておらず、情報も1カ月に1回しか更新していない状態です。
このようなことからも、審査ではファイルDが重視され、よほどの長期延滞や負債過多の状態でなければファイルMの情報がキャッシングの審査に及ぼす影響はほぼありません。
逆に言えば過去にショッピングローンで多少の延滞があってもキャッシングの返済がきちんと出来ていれば、キャッシングの審査は通過する可能性が十分にあるということです。
JICC加盟会社は消費者金融だけではない
2014年10月末時点で、JICCの加盟会社は、1,447社になっています。その内訳は、
- 消費者金融会社・・874社
- 預金取扱金融機関(銀行、信金など)・・241社
- 信販、カード会社・・124社
- リース会社、その他・・118社
- 保証会社・・90社
となっており、消費者金融会社以外にも、多くの業種の加盟があります。
また、このデータで明らかなように、JICC情報は、預金取扱金融機関にも開放されており、現時点でも241社(子会社の保証会社を含めるとさらに大きな数字になる)が、個人ローンの利用情報をJICCに登録していることになります。
このように、JICCには消費者金融会社以外加盟も多く、消費者金融が審査でJICCを照会すれば、それらの負債額も判明してしまうことになります。
※尚、JICCの会員数は、2017年11月で1,404社、2019年8月時点で1,122社であり、その会員数は年々減少傾向にあります。
与信担当者はJICC情報のどこを見ているか
消費者金融の与信担当者は、JICC情報のどこを見て、審査にどのように活用しているのでしょうか。
ポイントとなる項目を下記にまとめました。
①本人要件の確認日
本人要件情報(住所、電話番号、勤務先等)には確認日が付帯されているので、その情報がいつの時点での情報かを確認できるようになっています。
これを確認することで、最近、住所、電話番号、勤務先が変更したばかりかどうかおおよその見当がつきます。
②現時点での入金遅れの日数
契約ごとに、「次回入金予定日」が示されています。
JICCを照会した日付より、前の日付が示されていれば、入金遅れと判断されます。
③加盟会社の種別
会社識別情報で、融資している加盟会社の種別(貸金業者か貸金業者以外か)がわかります。
貸金業者の場合は、入金などの情報更新はリアルタイム(毎日)で更新することが義務付けられています。
(ショッピングローンなどは概ね、月1回。よって、ショッピングローンなどは実際に入金になっていても、情報が未更新のケースも考えられます。)
そのため、貸金業者の情報は、照会時点でタイムラグが少なく、かなり正確性の高いものになっています。
また、貸金業者の督促業務は一般的に厳しく行われているので、貸金業者の入金遅れ1ヶ月以上などの問題債権と判断されます。
④入金履歴情報
契約ごとの延滞記録が、直近12回分表示され、他社での支払状況を把握されます。
他社の支払が毎月、延滞ばかりの方は、もちろん審査通過は難しくなります。
逆に、属性が悪くても、他社の支払状況がしっかりしていれば、審査は通過しやすくなります。
特に中小規模の消費者金融には、大手に比べて属性の良い申込者は少ないので与信担当者にとっても他社の支払実績がわかるこの項目は最大のポイントになっています。
⑤借入件数残高情報
顧客の過去の借入件数、残高の履歴が表示されます。
これによって、現在の負債に至るまでの推移を把握されます。
(負債が増加傾向なのか減少傾向なのか、急激に増加したのか緩やかに増加したのか、過去の最大の借入残高はいくらか等)
もちろん、負債が急激に増加している方は敬遠される傾向にあります。
⑥本人特定支援情報
半年間は、申込みによって加盟会社がJICCへ照会した履歴が残っています。
その件数や期間を確認することで、その顧客が、どの期間に何社に申込みをしたかが判明してしまいます。
短期間に申込みが極端に集中している方は、敬遠されることになります。
JICCの電話番号検索サービス(CRDB)について
また、JICCでは信用情報の照会以外に、付帯サービスとして「電話番号検索サービス(CRDB)」があります。
この「CRDB」では、電話番号を端末に入力することで、
・NTT電話帳情報
・電話番号接続状況履歴情報
を照会することができ、消費者金融会社は審査の一環として利用しています。
(電話番号の接続情報については、固定電話のみならず、携帯電話も対象になっています。)
CRDBサービスは、これだけの非常にシンプルな内容ですが、活用することで、実は様々なことが見えてきます。
特に自営業者の方の審査には役立っています。
●NTT電話帳情報からわかること
NTT電話帳情報では、個人・法人に分けて下記の情報が判明します。
<個人の場合>
漢字指名・郵便番号・漢字住所・電話帳発行年月日
<法人の場合>
法人名・郵便番号・漢字住所・電話番号発行年月日・漢字業種名
但し、個人、法人いずれも、電話番号をNTT電話帳に登録をしていなければ、これらの情報は表示されずに「該当なし」となります。
最近では、個人の電話番号を電話帳に掲載する割合は低くなっているので、個人の情報が出ない場合も多くあります。
しかし、自営業者がお店の電話番号を電話帳に公開しないケースはまれなことです。
よって自営業者の電話が電話帳に掲載されていない時は、不審に思われ、それなりに警戒される可能性があります。
●電話番号接続状況履歴情報からわかること
CRDBでは、電話番号の接続状況を確認されるので、その電話番号が最近まで接続していたかどうかの情報が判明します。
申込者が自営業者の場合など、CRDBで調査した結果、お店の電話番号が最近、接続したばかりであれば、いくら本人が長年自営をやっていると申告しても、その事業は最近始めたばかりかもしれないとみなされる可能性があります。
また、「都合不使用」の情報がでた場合は、電話料金未納による電話接続の一時停止とみなされます。
この「都合不使用」の履歴が複数回ある場合、電話料金を未納にする傾向から、返済能力にも問題があると判断される可能性があります。
この接続情報は、最大6件(約1年分)の履歴情報が回答されます。
このようにCRDBの電話番号情報からも様々な情報が得られるので、消費者金融は審査をするうえで役立てています。