改正貸金業法で不動産担保ローンが変わった!
改正貸金業法により、消費者金融の不動産担保ローンも大きく変わりました。
ただこれがお客側にとって本当に良かったのか悪かったのかはなんとも微妙なところです。
いずれにしても、この法改正のおかげで、消費者金融の不動産担保は大きく制限されて、取り扱う業者が激減してしまったのは事実です。
法改正前の不動産担保ローンの実態
不動産担保ローンがどのように制限されたかを話す前に、法改正前の消費者金融の不動産担保ローンがどのようなものだったのかを話しておきましょう。
普通、不動産担保ローンと言えば、「担保となる不動産の評価の範囲内で融資を行う」というのが、銀行的な考え方です。
例えば、不動産評価額が1,000万円で、既に抵当権(担保)としてついている借入残高が800万円だった場合は、
1,000万円-800万円=200万円
という計算で担保余力は200万円となり、新たな不動産担保の融資もその200万円の範囲で行うというのが基本です。
しかし実際の消費者金融の現場では評価がない不動産に対しても担保設定して融資をすることが多く見られていました。
なぜかと言えば、お客にとっては、評価に関わらず、不動産を担保にとられているということはかなり強いプレッシャーになるので、返済の優先順位はおのずとあがり、債権保全になるからです。
実際、「きちんと返済しないなら、競売にかけて家を売り飛ばしてしまうぞ!」という脅し文句は極めて効果てきめんだったということです。
また、不動産というものは、不思議なもので「本人や身内の思い入れ」という付加価値が付くことがあります。
公示価格や流通価格ではほとんど無価値な土地であっても、例えば、「先祖代々から受け継いできた土地」というものは、その人達にとってはお金では計れない価値があるものです。
なので、本人が返済不能状態に陥った場合でも、身内が資金援助をして返済してくれることもよくありました。
このように不動産担保は、消費者金融にとって、取得しておいて損はないものなので、法改正以前は、100万円を超えるような大型ローンの場合はもちろん、時には20万円~30万円程度の小口融資まで、不動産担保による貸付がかなり一般的に行われていたわけです。
その方法も、実際に抵当権を設定する場合もあれば、いつでも抵当権を設定できるという「委任状」と印鑑証明をとっておくという方法もありました。
このような感じで、中には、相手の弱い立場に付け込み、実際の貸付額に対して不当に高い担保を取るような業者も存在しました。
法改正後の不動産担保ローン
そのような問題を受けて、2010年6月に改正された貸金業法では、総量規制の適用除外となる契約に不動産に関して以下のような制限を設けました。
- 不動産の建設、購入、改良に必要な資金の契約
- 貸付が行われるまでのつなぎ資金の契約
- 売却予定不動産の売却代金で返済予定の契約
- 返済能力を超えない範囲での不動産担保契約(但し、顧客や担保提供者の居宅や居宅用の土地、借地権、又は生計を維持するために不可欠なものであってはならない)
つまり、「消費者金融は、自宅を担保に取った場合は、総量規制の適用除外契約とならず、年収の3分の1を超える範囲内でしか融資が出来ない」ということです。
不動産を担保の規制は本当によかったのか?
このような規制が設けられたことによって、消費者金融が居宅を担保に大型融資を行うことは、実質的に不可能となってしまいました。
結果、不動産担保ローンの利用者は、消費者金融から貸出し金額に対して不当に高い担保を要求されたり、「自宅を競売にかける」などと脅されるようなこともなくなりました。
しかし反面、本当に資金を必要としているお客に融資をすることが出来なくなってしまったという面もあります。
多くの方が所有している不動産は、たいていは自宅(居宅)であり、居宅以外の手ごろな不動産を所有している人は、そうそういないと思います。
その居宅を担保として取得することが出来なくなってしまったため、現在では不動産担保ローンという商品は、多くの消費者金融が取扱いをやめてしまいました。
消費者金融の場合は、前述したように、そもそもほとんど評価がないような不動産を担保にしているわけなので、「ハッタリ」で競売をチラつかせることはあっても、実際に、消費者金融が競売にかけた案件はあまり多くはなかったはずです。
個人的には、返済不履行になった時は、住宅金融支援機構や銀行などの方がよほどシビアに(事務的に)競売にふられるイメージがありますが、皆さんはどう思いますか。