消費者金融業務経験者へのインタビュー
当サイトではキャッシングについて幅広い情報提供をするため、消費者金融業務の経験者へ取材やライティング依頼をすることがあります。
今回は、そんなインタビューのひとコマを紹介したいと思います。
尚、スペースの都合上、割愛したり、要約したりした箇所もありますが、内容に関してはできる限りそのままの形で伝えることにしました。
取材相手は、中小消費者金融での勤務がある2名の方々です。
中小消費者金融の審査について
ライター
中小消費者金融の審査は柔軟と聞きますが、どこまでの内容に融資していましたか。
具体的に教えて下さい。
Tさん
わかりやすいところでは、自己破産免責確定、債務整理和解済はOKですね。
あと、「延滞事故」もショッピングはOKとしていました。
Yさん
ほぼ同じですが、「延滞事故」に関しては、キャッシングで発生していても、10年以上経過していれば審査対象としていました。
※延滞事故:入金予定日から3カ月以上入金されないと、指定信用情報機関(JICC)に「コード21」という異動情報が発生すること。
ライター
3カ月未満の延滞についての取り扱いはどうですか。
Tさん
信用情報に、いわゆる「コード21」の異動情報が出ていなくても、延滞に関しては厳しく見ていましたね。
現在延滞中はもちろんNGでしたし、過去半年以内に10日以上の延滞が有る場合もNGとしていました。
Yさん
延滞回数とのバランスでしょうか。
場合によっては、20日以上延滞していても可決にすることもありましたが、それは、1年前に1回だけ遅れて後の支払いは遅れていないといった特殊なケースです。
基本的には、ウチも返済遅れについては厳しめだったと思います。
ライター
絶対に無理というのはどのような内容ですか?
Tさん
絶対にNGだった内容を羅列すると、
①総量規制オーバー、
②現在延滞中、
③信用情報で延滞の事故情報(コード21)が発生、
④信用情報で債権回収の事故情報(コード31)が発生、
⑤無収入の専業主婦、
といったところです。
Yさん
私のいた会社でも、信用情報に延滞事故や債権回収事故が発生している場合は否決でした。
あと、二十歳そこそこなのに借入れ件数が多い人(借入れが急激に増加している人)や、独身一人暮らしで居住も勤続も3カ月未満などの人(居住、勤務先が安定していない人)は否決でした。
ライター
世間では、中小消費者金融の審査は、まるで「無審査」のように思われている節もありますが、このように聞くと、どの会社も意外に審査は厳しい印象があります。
Tさん
中小消費者金融の審査はある意味では大手よりも基準が厳しい面もあるかもしれませんね。
大手は、善良な一般人の利用者が中心だけど、中小はどうしても、多重債務者や自己破産、債務整理経験者など、「訳あり」の人からの申込みが多いから、その辺りはしかたがないですね。
Yさん
ポイントは、「延滞」です。
結構な負債額でも、「延滞」していなければ、総量規制の範囲内なら可決になる可能性が高いと思います。
ライター
中小消費者金融の承認率が大手と比較して、上下しやすいのはどのようなことが原因となっているのでしょうか。
Tさん
営業目標数値との関連ではないかな。
目標数字に届かない時は、決裁者の判断もブレることがあったような気がするね。
意識的に可決を増やしていたんじゃないかな。
年度末なんかは、年間目標との兼ね合いもあるから、高くなるんじゃないかな。
Yさん
大手と違うのは、人手が安定していないことです。
中小業者は人手不足などで、比較的、処理能力が低い時期もあります。
そんな時期に申込件数が増えると、どうしても承認率が下がる傾向はあります。
取り立て(債権管理)について
ライター
一般的に中小消費者金融の債権管理は、「怖い」というイメージがありますが、実際はどうなんでしょうか。
Tさん
ひと昔前のような、荒っぽい管理をする人は、確実に減ったと思いますよ。
電話口で怒鳴ったりする人って、昔はいましたよね。
最近は私の知ってる限りでは、そういう管理は誰もしなくなりましたね。
Yさん
それは私も思います。
平成22年の改正貸金業法施行以降、空気が変わりました。
昔は、取り立てするのに、多少、乱暴な態度をとるのはOKみたいな空気がどこの消費者金融にもあったと思いますが、法改正を機になくなった気がします。
Tさん
そうですね。
消費者金融に限らず、世の中全体の空気が、乱暴な企業の存在は許さなくなくなってきています。
もはや、荒っぽいやり方で生き残れる時代ではなくなりましたね。
いずれにしても、かつて消費者金融につきものだった、「過酷な取り立て行為」は、いまどきは、ほとんど問題になっていないと思います。
ライター
回収手段としては、どこまでのことをしていましたか。
Tさん
昔と大きく変わったのは、「訪問集金」には、ほとんどいかなくなりましたね。
インターネットキャッシングで客層が日本全国に分散されて、遠方の客が増えたことも原因です。
他は、電話したり、書面を出したりと、やっていることは変わらないと思います。
ライター
通常の督促で解決つかない場合、訴訟などの法的手段は、積極的に実施していましたか。
Yさん
全ての債権に訴訟をやっていられないので、訴訟をする債権には、一定の基準を設けていました。
具体的には、
①残額が少額の債権は除外(費用対効果が悪い。)
②独身一人暮らしは除外(家族の協力が得にくい。所在不明になりやすい。)
③勤務先が不明な人は除外(給料差押えが出来ない。)
こんなイメージで訴訟に進む債権は限定していました。
この辺りの基準は、各会社によって違うと思います。
ライター
これまでのお話を聞く限り、消費者金融は昔に比べて、マイルド化してるというか、対応がソフトになっていると思われますが、それでも、過度な取り立て行為があった場合はどうすればいいかアドバイスを下さい。
Yさん
被害の度合いや頻度によって、段階的に相談先は変えると良いと思います。
具体的には、
①各消費者金融のお客様相談センター
②日本貸金業協会の「相談・苦情受付窓口」
③所轄官庁(各財務局・各都道府県知事)
の順になります。
Tさん
よほど酷い取り立てならやむを得ないと思いますが、極論、普通に対応していても、客が、威圧的と感じたら威圧になってしまうのが、いまどきの考え方です。
個人的には、最近の消費者保護の風潮は、やや行き過ぎているようにも感じるので、どうかと思いますが、所轄官庁に、何度も苦情を入れられると、目を付けられるから、実際、消費者金融側としては迷惑しますね。
ただし、だからといって、些細なことでやたら、所轄官庁に苦情ばかり入れていると、単なる「クレーマー」の類と見なされるので注意して下さい。
自己破産・債務整理後の申込みについて
ライター
自己破産後の申込みについては、当サイト上で何度か特集したことがありますが、概ね以下のようなことをポイントにしています。
①自己破産したことをアピールする!
②免責確定から少なくとも半年ほど期間を空けて申込みをする!
③信用情報を開示し整理してから申込みをする!
これ以外に何かアドバイスはありますか?
Tさん
自己破産をした後、最初の1件目は特に重要ですね。
最初の1件が通過するかどうかで、その後、借入れが順調に出来るようになるか、出来なくなるのか変わってくることもあります。
ライター
具体的にはどういうことですか?
Tさん
中小消費者金融が審査で参考にしているのは、「返済実績」です。
自己破産をしてから、まだ、どこも利用していない人よりも、どこか利用していて、そこで正常に取引がされている人の方が、自分のところでも融資しやすいよね。
だから、最初の1件目の審査は、実は一番ハードルが高い。
Yさん
それは確かにあります。
他社で何社も否決されていたら、「実は、何か隠しているのでは」と勘繰ってしまいます。
逆に、貸出ししている業者があって、そこで、遅れなく支払い出来ていれば、安心して融資しやすいということはありそうです。
Tさん
1件通ればその後3件くらいまでは順調に審査が通過する可能性が高いですね。
さすがに立て続け4件目となると、やや厳しくなってくるかもしれません。
ライター
ちなみに、過去自己破産をした方は、銀行や大手消費者金融では、融資することはないのでしょうか?
Tさん
具体的な社名は控えますが、銀行でも大手消費者金融でも、過去に自己破産をした方にも融資をしていたところはありましたよ。
特に、地方銀行は積極的に融資していた印象があります。
ただ、銀行は、最近、過剰融資と言われて、叩かれているから、今後も積極融資を続けていけるかは不明です。
Yさん
確かに、今後、銀行カードローンの融資スタイルがどう変わってくるかによって、自己破産者への貸付けも大きく変化するかもしれません。現在は動向を見守るしかありません。
ライター
債務整理の申込みについては、
①自己破産と同じく債務整理したことをアピールする。
②自己破産と同じく信用情報を開示し整理する。
③和解してから申込みをする。
といったことをポイントに記事を書いてきました。
これ以外にアドバイスはありますか?
Tさん
最初の1件目が重要なのは自己破産と同じだね。
あと補足すると、債務整理の方が、自己破産より複雑で、わかりにくいので、状況を上手に伝えることが必要ですね。
債務整理中の方の審査は、信用情報の内容だけでは、審査担当もなかなか判断できないはずです。
申込みフォームの備考欄を駆使するなどして、現在の状況を伝えて下さい。
Yさん
新たな申込みをするのは、和解後の返済を開始してから半年は空けた方が無難です。
少なくとも3カ月以上は空けて、そもそも和解分の支払いがきちんとできているかを見定めたうえでないと可決は出しづらいです。
あと、自己破産みたいに、立て続けに可決は出にくいかもしれませんね。
自営業者への融資について
ライター
消費者金融は、一般的に「自営業者」の融資に対して、消極的なイメージがありますが、お二人の意見はどうですか。
Yさん
正直なところ、個人的には、自営業者への貸出しはあまり好きではありません。
消費者金融のように、簡易な審査で融資する場合は、やはり、決まった給料日に安定した収入があるサラリーマンが一番だと思います。
Tさん
あと自営業者が不良債権化した場合、なかなか回収は困難でしたね。
サラリーマンのように給料差押えもできませんし、「ないものは払えん。だから待て!」と、いざとなった時の開き直り方が半端ないですね。
サラリーマンに比べて、やんちゃというか、「横着」な人が多かったような気もします。
ライター
う~ん、自営業者の評価は、お二人とも低いようですね。
どうやらお二人とも、自営業者の回収業務で、苦労された経験があるようですね。
やはり、大方の業者は、そういう意見なんでしょうか?
Yさん
いえ、そうでもありません。自営業者への貸付けが好きでないのは、あくまで私の個人的な意見です。
私が在籍していた会社にも自営業者へ積極的に貸付けすべきだと主張する人はいました。
自営業者は、時に、サラリーマンでは、絶対に捻出できないような金額のお金を工面してくることがありますし、また、驚くような属性の良い連帯保証人を連れてくることもあります。
やり方によっては、魅力的な市場だとは思います。
Tさん
私の印象では、その消費者金融の営業部門のトップの考えで、大きく変わるという印象があります。
営業部長などが、自営業者への貸出しに積極的かどうか次第じゃないですか。
但し、ここで言っているのは、普通の「小口フリーローン」ではなくて、事業者向け融資としてある程度の大口融資のことですね。
Yさん
うん。確かに、自営業者は「フリーローン」向きではないですね。
自営業者は、さっき、Tさんが話してたように、一旦、不良債権化したら、なかなか回収は困難な傾向があります。
だから、いかに融資する際に、情報収集して保全措置を講じておくかがポイントになりますね。
なかなか、簡易な審査でスピード融資とはいかないですね。
ライター
まとめると、
①自営業者への貸出しは、「フリーローン」には向いていないという考えが主流。
②事業者ローンに力を入れている会社もある(営業トップの考えによる)。
③自営業者への貸出しは、最初にいかに保全しておくかがポイント(不良債権化してからでは遅い)。
ということですね。
最後に
いかがでしたでしょうか。
もちろん、これが全ての中小消費者金融にあてはまるわけではありませんが、このような取材からも、中小消費者金融の実態というものが多少でもかいま見えてきたのではないでしょうか。
尚、当サイトでは今後も業界経験者へのインタビューを継続してゆく予定なので、また随時レポートしていきたいと思います。