今だから話せる中小消費者金融裏話
消費者金融業界もつい20年ほど前までは、牧歌的と言いますか、かなり緩い時代がありました。
今回、そんな時代の裏話をいくつか紹介していきたいと思います。
今にして思えば「ちょっとこれありえへんやろ!」ということも一部含まれていますが、これは全て筆者の実体験。
まさに「事実は小説より希なり」なのであります。
是非、最後まで、緩~い気持ちでお楽しみ下さい。
Contents
信用情報の使い道
指定信用情報機関での調査は、「申込者の返済能力調査」や「債権管理目的の調査」以外の目的では利用してはいけないことになっています。
なにせ、名前と生年月日さえ(現在は電話番号も必要)分かれば、誰の情報でも簡単に照会出来てしまうわけです。
個人情報の漏洩防止が厳しく言われるようになった昨今、消費者金融には従業員が目的外利用をしていないか監視することが義務付けられていますが、ひと昔前までは、その辺りは、かなり緩い感じでした。
事実、私はある消費者金融で勤務していたことがありますが、初めて信用情報の照会の仕方を教えてもらった時は、試しに自分自身の名前で照会させられた覚えがあります。(もちろん完全な目的外利用です)
周りには興味本位で知人の信用情報を照会する従業員もいましたし、私自身も知人から誰かの信用情報の照会をお願いされた記憶もあります。
また求人募集の際、採用有無を決めるのにも、指定信用情報機関を照会するのは基本でした。
この調査で、当人やその家族が消費者金融から借入れがあったりすると、不採用の可能性が高くなるということです。
もちろん今現在は、そのようなことをやれば、業務停止のリスクも高く、社内チェック体制も厳しくなっているので、どこの会社もやっていないと思います。
※消費者金融の採用試験を受ける人で、不正に信用情報の照会がされていないか不安であれば、指定信用情報機関に問い合わせをすることも出来ます。
このようなことは今にして思えば、まさに「ありえへん」ことですが、20年ほど前までは大して悪びれずに目的外利用が黙認されていた時代が確かにあったのです。
住民票の申請の仕方
消費者金融では顧客が行方不明になったしまった時など、住民票を申請して追跡調査をすることがあります。
既に顧客との契約で、債権保全のため住民票を申請することの同意を取っているので「契約書の写し」を添付すれば郵送で簡単に申請することが出来るのです。
但し、引っ越ししているのは明らかなのに本人の住民票が動いていない場合も多く、調査が頓挫してしまうこともありました。
そんな時の必殺技は、本人だけでなく「家族」の住民票を勝手に申請してしまうという方法です。
やり方は実に簡単で、家族の氏名で偽の契約書を作成して、その写しを添付して住民票を申請するのです。
仮に一家で行方不明になってしまった場合、借入れしている本人は、住民票を異動させていなくても、家族の誰かが異動させている場合もあります。
すなわち家族の住民票から、契約者の居住先を追跡できる可能性もあるというわけです。
当たり前ですが、もちろんこれも、やってはいけないことです。
これだけ個人情報管理が厳しく問われる現在は、役所のチェックも厳しくなっています。
いまどき、リスクを冒してまでこのようなことをする会社はないでしょう。
社員の氏名はキラキラネーム!?
ここからはちょっと箸休めのお話。
昔の消費者金融の取り立ては、今と比較するとかなり乱暴なものでした。
そのため、恨みを買うことも多いという配慮から、従業員に偽名を名乗らせて客に対応させている会社も多くありました。
その偽名を決めるについても、気の利いた会社なら自分で決めさせてくれたものです。
せっかく、偽名を決められるとなれば、気取った名前を付けたくなるのが人情ってもんです。
鈴木や加藤なんて平凡なのは、ちょっといただけません。
そんなわけで例えば、
結城(ユウキ)
吉川(キッカワ)
白銀(シロガネ)
竜崎(リュウザキ)
といった、場末のホストよろしくキラキラネームだらけの店ができあがったりしたものでした。
でも、笑ったりしちゃあいけません。
みんな若かったのです。
そんな文化もいつの間にか廃れてしまいました。
なぜだけ説教されることに・・・
いまひとつ箸休め。
今度はお客さんから聞いたノンセンスなお話。
これは、正直、ありがちな話ですね。
私が若かりし頃も、「お金はきっちり話し込んでから貸せ!」と先輩に教えられたものです。
でも、よく考えたら、自分で営業しておいて、おかしな話かもしれませんね。
お気持ちはお察しします。
イマドキの消費者金融社員の実態
ここまで牧歌的で、やや横着だった時代のお話が続きましたが、ではイマドキの消費者金融社員の実態はどうなっているのでしょうか。
その辺りを最後にお話しておきましょう。
①外見的特徴
ひと昔前までは、見た目でその人の職業がわかったものです。
例えば、
大工さん、とび職、建築は、ハッピやニッカポッカ!
銀行員は、眼鏡に七三分けの髪型!
刑事の張り込みは作業ジャンパー!
といった具合に、どの職業の人も、だいたいひとめで、それとわかる恰好をしていたものでした。
しかし、最近は、すっかり世の中の傾向は変わってしまい、ヤクザのような素人もいれば、素人のようなヤクザだっていたりします。
また、風俗嬢やホステスと女子大生の区別もつかない人も多いのではないでしょうか。
このような中、もはや、「ファッションがその人の職業を語る」ということは、なくなってきているようです。
その傾向は消費者金融の従業員も同じです。
銀行傘下にある、大手消費者金融では、華美な恰好は敬遠されていますし、茶髪や派手な柄シャツなどはもっての他でしょう。
中小消費者金融でも、よくドラマなどに登場する、いかにもそれっぽい「派手な格好」の従業員は、最近、めっきり見かけなくなりました。
地方都市では稀に存在しますが、徐々に「重要文化財」の扱いになってきていることは否めないでしょう。
②若者はほとんどいない
ここ数年の消費者金融業界は慢性的な若手不足に悩まされています。
はっきり言えば、消費者金融業界が、若手にとって魅力ある業種に映らないということでしょう。
貸金業者の数は、ピークの昭和61年には47,504件もありましたが、令和元年4月には、1,429件まで激減しています。
ここまで業者数が減少している背景には、段階的な利息の引き下げや、過払い問題、等々、様々な要因があります。
また、廃業していなくとも、業務縮小を余儀なくされた業者も多くあります。
そのような中、そもそもごく少数の業者しか求人募集を行っていないのが現状です。
③怪しげな社員が多い!?
中小消費者金融の仕事は、「爽やか」とは程遠い、地味で陰湿な内容が多くあります。
融資業務のヒアリングでは、数多くの顧客の生活状況を詮索したり、回収業務では、行方不明者の調査をしたりと、まるで刑事か探偵のようなことも行っています。
このような、仕事を長くやっていると、一見、何を考えているのかわからない、なんとも言えない、怪しい雰囲気をまとった社員もでてきます。
俳優で言えば、岸部一徳、小日向文世、をもっと、くたびれさせた感じでしょうか。
しかし、残念なことに、当の本人は、自分の怪しさにあまり気が付いていないことが多いようです。
「どうしてこの人は人間をそんなに疑り深く見るのだろう」
と思える、どこか性格が偏った人物がいたら、ひょっとしてそうかもしれません。
④民事には詳しい
消費者金融は、その仕事柄、弁護士や司法書士との交渉、裁判所への出廷などの業務が日常的にあります。
また、貸金業務取扱主任者の試験でも民法は必須です。
そのため、法律に関して、ある程度の見識を持っている人が多く、民事にやたら詳しかったりします。
特に「債権債務」といったワードに敏感に反応する人は、ひょっとするとそうかもしれませんね。
とまあ、最後は悪口のようになってしまいましたが、元同業者の私としては、決してそのような意図はなく、いわば同胞へのエールのようなものです。
強面(コワモテ)社員が減少しているなか、彼らには是非頑張って欲しいと思う次第です。