差押えの実態を徹底解説
消費者金融の債権回収の最終手段に「強制執行(差押え)」があります。
強制執行とはその名の通り、返済をしないお客の財産を強制的に差押えてお金に換える行為のことです。
では現実の差押えはどのように行われているのでしょうか。
本当にドラマのように、借金取りが自宅に土足で上がり込んで「差押え」と書いてある紙を家財道具に貼っていくことがあるのでしょうか。
今回、消費者金融の差押えについて徹底解説していきたいと思います。
Contents
いきなり差押えは出来ない
まず覚えておきたいのは、返済が滞ったからといっていきなり差押えをすることは出来ないということです。
消費者金融が差押えをするためには、まずは「債務名義」という、請求の存在、範囲、債権者、債務者を表示した公の文書を取得しなければなりません。
わかりやすい例で言えば、裁判の「判決」が債務名義になります。
消費者金融が差押えをするためには、訴訟提起をする、または支払督促を行って、まずはこの「債務名義」を取得するとこからはじめなくてはなりません。
例外的に、特定公正証書で契約を取り交わしている場合は、いきなり強制執行に進むことも可能ですが、消費者金融の契約で公正証書までとるのは一般的ではありません。
強制執行の対象は?
強制執行の対象となるのは、主なもので、
- 給料
- 預金口座
- 不動産
- 動産(家財道具)
などがありますが、現実的に回収の足しとなるのはほとんど「給料」だけです。
差押えをされるような人の預金口座にはお金が入っていないことがほとんどですし、不動産は売却しても、大抵、住宅ローンの残額が残っているので、お金は回ってこないことがほとんどです。(家財道具については後述します。)
その点、給料は最大で手取りの4分の1までの金額を差押えすることが可能なので、勤務先が判明している場合、まずは「給料」が差押えの対象となります。
しかし勤務先が判明していない場合などは、せっかく訴訟して債務名義を取得しても、強制執行するものが何も見当たらないということになってしまうこともあります。
悲劇は突然やってくる!
ナアーンダ、簡単に強制執行することが出来ないならまだまだ放置しておいても大丈夫だ、なんて思った貴方、油断は禁物です。
消費者金融は、強制執行出来るようなものがなければ、しばらく、寝かしておいて、定期的に、住民票申請や信用情報の照会を行いながら、常にその機会をうかがっているからです。
消費者金融からの借金の時効は5年ですが、裁判を起こされている場合は、判決が出た時から、改めて10年の時効期間がスタートすることになります。
(参考記事:借金の時効について)
人の生活環境は、10年もすれば、ガラリと変わったりするものです。
特に若い人は、「結婚」が大きな転機になる人が多いようです。
20代前半は、若気の至りで、横着していた人も、10年も経てば、結婚を機に、すっかり真面目な生活者になっていることは実は少なくありません。
若い時はやんちゃもしたけど、結婚を機に、すっかり真面目になって、いまでは会社からの信頼も厚く、日夜、愛する妻子のため頑張っているお父さんに、ある日突然、「給料差押え」手続きが入ってしまうという悲劇が起きてしまうことがあるのです。
借金問題は絶対に放置しないこと
このように借金を放置しておくことは、非常に危険です。
若い時は気にしないかもしれませんが、後々、せっかく立派に更生して、働いているのに、その足を引っ張られることになりかねませんし、下手をすれば、そのことで会社に居づらくなり、職を失うことになるかもしれません。
逆に言えば、消費者金融は、このように給料差押えが出来るように、立派に更生して働いてくれるのをずっと待っていたということです。
これは、なにも消費者金融が悪いわけではありません。
貸したお金が返ってこない、消費者金融はむしろ被害者で、借金を返済せずに放置したままにした人が悪いのは言うまでもありません。
このような悲劇を起こさないためにも、借金は、絶対に放置せず、解決しておくことをおすすめしておきます。
家財道具の差押えはホントにあるのか!
また、先ほど後述すると記した、動産執行について解説したいと思います。
現実的にはドラマのように、家財道具の差押えまで行われることは、ほとんどありません。
動産執行をしても、空振りも多く、仮に、差押え出来ても、二束三文にしかならないので、回収手段としては、費用対効果が著しく悪いからです。
しかも現実の動産執行は、何でもかんでも差押え出来るわけではなく、差押え出来るもの以下のようにかなり限られています。
①生活必需品はNG
まず、生活に欠くことができない衣服,寝具,家具,台所用具,畳及び建具は、原則、差押えすることは出来ません。
一般的な家財道具のほぼ全てがこれに該当することになります。
差押え対象となり得る物は、例えば、2台目以上の高級テレビや、高級腕時計、貴金属などです。
②食料、燃料もNG
一ヶ月間に必要な、食料や燃料も差押え出来ません。
③66万円までの現金はNG
現金は2ヶ月分の生活費にあたる、66万円までは、民事執行法で、差押えすることが禁止されています。
通常、差押えまでされる家庭に、そこまでの現金がおいてあることは考えにくいので、実際、現金が差押えされることはほとんどありません。
④家族所有の物はNG
例えば、夫の借金で、妻が所有している物を差押えすることは出来ません。
所有者の判断は、なかなか困難で、「これは、私の物でなくて、妻のものです。」と言われてしまうと、差押えはかなり困難になります。
それでも動産執行するケースもある!
このように動産執行は回収手段としてはかなり効率の悪い方法ですが、それでも消費者金融はあえて、動産執行に踏み切るケースもあります。
それは、「債務者に嫌がらせをしてプレッシャーをかける!」
という目的で動産執行を行う時です。
動産執行をかければ、たとえ、差押えは空振っても、実際、執行官が自宅まで来ることになるので、債務者にかなりの心理的なプレッシャーをかけることが可能です。
そこまですることによって、自主的な返済を促したり、身内からの協力を見込んだりという作戦です。
このため、動産執行は、協力が見込めそうな、家族や身内が同居している人を狙って実施されることが多いのです。
このようなことにならぬよう善良な皆さんは十分に気を付けて下さい。