これが消費者金融の取り立てだ!
この記事はかつて消費者金融での回収業務の経験がある筆者が、その経験を基に「取り立て方法」についてレポートしたものです。
消費者金融の取り立てというと漫画やドラマの影響もあって、どうしても「怖い」というイメージを持っている人も多いと思いますが、イマドキの取り立てはもっと「クレバー」で合理的です。
ここではリアルな取り立てについてお伝えしていきます。
取り立ての流れ
まずは消費者金融の取り立てがどのような工程で行われるか見ていきましょう。
次に記したものはあくまで一般例ですが、消費者金融の取り立ては、おおよそ以下のような流れで行われています。
第1段階(電話督促、督促状の発送)
ややアナログに感じるかもしれませんが、消費者金融の債権回収手法はいまだに電話督促が主流です。
実際に、消費者金融の債権管理担当の業務のほとんどは電話督促です。
延滞者の中には、電話をしても出ない人もいますが、それでも、電話に着信を残しておくことで、延滞者に対して一定のプレッシャーを与えられると考えられています。
電話をかける先は、
①携帯電話
②自宅
③勤務先
という順序で、徐々にかける先が増えていきます。
もちろん、勤務先にまで電話をする時は、社名を名乗ることはありません。あくまで担当者の個人名で問い合わせを行うなどの配慮はされています。
また、電話督促と並行して、書面による督促も行われます。
具体的には、自宅住所に督促状を送付しています。
書面の内容は、初期延滞の間は「返済案内書」程度のものですが、延滞日数に応じて、段階的に厳しい内容になっていきます。
郵送手段も、
①普通郵便
②速達
③簡易書留
④内容証明郵便
などが使い分けられています。
第2段階(内容証明などで最後通告書を送付)
督促書面は、最終的には、法的予告の文言が盛り込まれた、「最後通告書」のような書面が送付されることになります。
特に内容証明郵便は、郵送コストもかかりますが、威圧感もあり、「それっぽい雰囲気」が出るので、昔から消費者金融では好まれて利用されています。
第3段階(貸金訴訟)
電話、書面、訪問などの手段で解決できない場合は、法的手続きをとられる場合があります。
具体的には、「貸金請求訴訟」や「支払督促」などの手続きがとられます。
しかし、延滞顧客の全てに法的手続きがとられるわけではありません。
法的手続きには、申立てにかかる費用、その作業にかかる人件費、交通費などのコストがかかるため、法的手続きを実施する価値があるかどうか選別したうえで、ある程度、回収見込みがある顧客に限定して実施されています。
選別のポイントは以下のようになります。
①訴状が送達出来るか
裁判所からの訴状は特別送達という方法で行われます。特別送達は、原則、直接交付なので、ポストに投函して終了というわけではありません。
このため、自宅で受け取りが可能かどうか最後通告書などの書面を簡易書留などで送付し確認します。
もし自宅で送達出来なくても、
- 就業先送達(勤務先に送達する方法)
- 付郵便送達(相手が受取拒否などで送達できない場合、居住調査をしたうえで、書留に付する形で普通郵便を発送し送達したものとみなされる方法)
- 公示送達(相手が行方不明などの場合、訴状を裁判所の掲示板に張り出すことで受けとったものとみなされる方法)
などの送達方法もありますが、いずれも、送達するについて、条件や調査が伴うので、簡単ではありません。
②強制執行の対象はあるか
仮に、消費者金融の言い分通りの判決が出ても、強制執行(差し押さえ)する対象がなければ、顧客が支払いをしなければ対応しようがありません。
一応、債務名義の時効は10年あるので、その間に強制執行する対象が判明すれば執行は可能ですが、判明する可能性はそれほど高くありません。
③その顧客に守るべきものがあるか
たとえば、天涯孤独のような人は、家族がいる人よりも、社会的に失うものが少ないと考えられます。
極論、顧客に失うものがなく、やけっぱちに開き直られた場合、その債権を回収できる可能性は、限りなく低くなります。
訴訟する相手に守るべき何かがあるかどうかは大事なポイントです。
その他、あまりに少額の債権もコスト面から割に合わないと考えられています。
また、強制執行先がなくても、顧客との交渉を有利に運ぶ材料として、法的手続きが取られることもあります。
第4段階(差押え)
判決後、強制執行先があれば、差押え手続きに入ります。
差押えについては以下の記事で詳しく説明しています。
(参考記事:差押えの実態を徹底解説)
イマドキ訪問集金は流行らない
昔は取り立てと言えば、何かと直ぐに訪問集金に出向いたものでが、イマドキは、以下のような理由からも訪問集金を実施している消費者金融は少なくなりました。
最近では、訪問集金はむしろ効率の悪い回収方法という認識になっています。
①インターネットが普及した
かつての消費者金融は、各地域に有人店舗の支店を設置して営業範囲を拡大してゆく方法が主流でしたが、現在はインターネットの普及により、全国に支店を設置しなくても、1店舗で全国展開が可能となりました。
すなわち、ネットで申込みを受付け、振込みで融資を行うという方法です。
遠方への貸出しも増えるので、おのずと訪問集金は減っていきました。
②携帯電話が普及した
イマドキは、自宅に固定の電話がなくても、携帯電話を持っていない方はほとんどいません。
事実、携帯電話の普及率は現在、人口普及率で100%を超えており、1人1台以上の計算になります。
この携帯電話の普及によって顧客と連絡がつきやすくなったことは間違いありません。
以前に比べ電話連絡がつきやすく現地訪問をする必要性は減りました。
③訴訟手続きを活用するようになった
イマドキの消費者金融は、頻繫に訪問集金に出向かないかわりに、頻繁に「貸金請求訴訟」を提訴するようになりました。
裁判所を取り立て業務に利用していると言っては聞こえが悪いのですが、前述したように、裁判所から呼出状が送られることで顧客から反応があるケースも多く、特に執行先がなくても提訴することがあります。
貸倒債権の回収は宝探し
ほとんどの消費者金融が行っている業務に「貸倒債権の回収」があります。
消費者金融業を継続する以上、一定の割合で不良債権は必ず発生することになります。
その中でも回収見込みが薄い債権は、貸倒償却すれば経理上のメリットもあるので、どの業者も一定数の貸倒償却を行っています。
しかし、一旦、貸倒償却した債権も、後に回収できる可能性がある債権もあります。
自己破産や死亡などはその後も回収見込みはありませんが、行方不明や返済不履行で貸倒償却した債権がそれにあたります。
年月が経過すれば、所在が判明する人もいますし、生計を建て直して、支払能力が復活している方もいるので、貸倒償却した当時は回収できなくても、後々、簡単に回収できるようになるケースも出てくるのです。
このように消費者金融は定期的に貸倒債権の回収業務を行っていますがその主な調査方法は、
- 住民票を申請する
- 指定信用情報機関の調査を行う
といったシンプルな方法のみです。
これらの調査を行うことで、所在や連絡先が判明したり、現在の勤務先も判明したりするような場合もあります。
特に住民票調査は住民票を動かさないまま、何年も生活を続けることは現実的に困難なので意外に簡単に所在が判明することも多いのです。
取り立てに関する口コミはあてにならない
消費者金融の口コミの中でも、「督促」、「顧客管理」、「取り立て」といったものを調べてみると、「ヤクザのような口の利き方だった」とか、「1日遅れただけですぐに電話がかってきて、上から目線で言われた」などと、かなりネガティブなイメージの書き込みが見受けられます。
しかしこのような口コミ評判はあまりあてにはならないので必要以上に気にする必要はありません。
督促について口コミを書き込む人は、実際に返済を延滞して督促された方です。
もちろん好き好んで延滞する人などいないので何らか事情があっての人が多いのですが、督促されることは、誰もが気分の良いものではありません。
極論、「爽やかで気持ち良い督促でした」というような方はいないでしょう。
おのずと、督促に関する口コミは、大なり小なり、ネガティブな内容になってしまいます。
中には、腹立ちまぎれにあることないこと書き込む人も多く、正直、督促についての口コミはあてになりません。
返済が遅れてしまった時の対応方法
消費者金融の返済を最低分割金で返済すれば、返済期間は3年~5年ほどかかります。
その間には、やむを得ない事情によって返済が遅れてしまうこともあるかもしれません。
最後にそのような時の対応方法を記しておきます。
①消費者金融には必ず連絡する
返済が遅れそうであれば、まずは必ず消費者金融に連絡を入れて下さい。
中には連絡しづらいと、放置してしまう人もいますが、連絡をせずに、延滞を続けることは一番まずい対応です。
消費者金融も連絡が取れていれば、それ以上訴訟などの手続きに進むことはまずありません。
②見え透いた嘘はつかない
延滞する人の中には、返済が遅れる言い訳に、かなり見え透いた嘘をつく方もいます。
よくある言い訳(嘘)は大体以下のようなところです。
- 体調が悪いフリをする。
- 財布を落としたと嘘をつく。
- 身内の不幸と嘘をつく。
- 銀行のカードを無くしたので再発行するまでお金を引き出せないと嘘をつく。
- 天候がひどく入金に行けないと嘘をつく。
- 入金したはずと嘘をつく。
消費者金融の担当は、日々、このような言い訳は聞きなれているので、見え透いた嘘をついてもすぐにばれてしまいます。
もし、このような見え透いた嘘をついて返済をある程度猶予してもらえたのであれば、嘘とわかったうえであえて見逃しただけのことです。
今まで、延滞がほとんどなかった方であれば、このような見え透いた嘘に付き合ってもくれますが、毎回このような手は毎回通用しません。
③日頃の信頼が重要
本当にやむを得ない場合に返済を猶予してもらえるかどうかは、今までの取引の実績によります。
毎回、遅れずに返済を何年もしてきた方であれば、やむを得ない事情の場合は猶予してもらえる可能性は高いと言えますし、毎回のように返済遅れが続く方であれば、簡単に猶予はしてもらえない可能性が高くなります。
このように、常日頃の入金実績や信頼が、いざという時に役立ちます。普段から、返済は安易に遅れないようにして、信頼を築いてゆきましょう。