特定調停が流行らない理由
債務整理の手段のひとつに「特定調停」というものがあります。
費用も安く、一時期は大人気でしたが、近年この手続きの利用者は減少傾向にあります。
なぜこのように特定調停の人気がなくなってしまったのでしょうか。
この手続きはもう有効ではないのでしょうか。
今回、詳しくレポートしてみました。
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特定調停とは
「特定調停」とは、契約通りに借金の支払いを続けていては、最低限度の生活にすら事欠くような個人や、債務超過に陥る可能性が高い法人が対象となり、裁判所の調停委員を介して、貸金業者等の債権者と減額交渉を行う手続きのことを言います。
他の債務整理と比較して費用がかなり低額ということもあり、2000年の特定調停法施行後にその申立件数は急増しました。
しかし、2004年に約38万件あった申立件数はその後、年々減少傾向で、2010年には3万件となっています。
近年、消費者金融の現場でも、弁護士、司法書士の介入による債務整理は数多く見られますが、特定調停の申立をする方はほとんどおらず、もはや手続きとして一般的に浸透していないものになってしまっている印象があります。
和解成立件数が極端に低い理由
2004年から2010年の平均で、特定調停申立件数に対して和解が成立した件数はわずか3.1%でした。言い換えれば、申立をしても約97%近くは交渉決裂となっているということです。
原因は様々あると思いますが、代表的なこととしては以下のような理由が考えられます。
①過払い金返還請求は出来ない
特定調停は、特定債務の調整が目的なので、利息制限法に引き直した結果、たとえ過払いの状態であっても、過払い金返還請求はできません。
このため、他業者からの過払い返還金を、返済原資として返済計画を立てることができませんし、多額の過払い金返還が見込めるのであれば、債務者にとっては特定調停で和解しない方が良いということになります。
過払い金返還請求の増加に反比例して、特定調停の申立件数が減少してゆきました。
②調停委員は専門家ではない
債務者と債権者の間に入る調停委員は、債務整理の専門家ではありません。そのため、もともと和解の前提となる返済計画に無理があったりして、せっかく和解したのに、生活が破たんしてしまうケースも珍しくありません。
また、悪気はなくても、必ずしも債務者に有利となる内容での和解ができないケースもありました。
③自己破産をすすめられることも
前述のように、特定調停では過払い金返還請求はできないため、減額幅が少なく、返済計画の内容もよりシビアなものになってきます。
3年ほどの分割払いであれば、和解は成立しやすいですが、それ以上の長期分割になると、業者もなかなか承諾してくれず、和解成立が困難になってきます。
結果、話がまとまらず、自己破産をすすめられることも多くあったようです。
④判決と同じ効力があるため安易な和解は危険
特定調停で和解すると調停調書が作成されます。
裁判所で作成したこの調書は判決と同じ効力をもった非常に強力なものです。
もし、和解内容通りに返済が出来なくなった場合、債権者はこの調書をもとに、即強制執行が可能ということになっています。
特定調停で、安易な返済計画をもとに和解することは、本来かなり危険なことなのです。
特定調停は条件があえばまだまだ有効
このように特定調停が流行らないのには様々な原因がありますが、条件が合う人にとってはいまだに有効な債務整理の手段であることは間違いありません。
特定調停に向く人の条件を以下にまとめてみました。
- とにかく費用を安くおさえたい人
- 借金の元金のみであれば、3年以内で返済できそうな人
- 過払い金が発生していない人(2019年6月18日以降の契約のみの人)
- 平日、裁判所に出向く時間がとれやすい人
いかがでしょうか。
現実的に、債務整理で人気があるのは、弁護士、司法書士に依頼をすることですが、債務整理を行っている弁護士、司法書士の中には、利益偏重主義で、あまりお客のことを考えてくれない事務所も存在します。
そのような事務所に依頼するくらいであれば、特定調停の方が、利益がからんでいない分、安全な手続きだと言えなくもありません。
債務整理を検討するのであれば、このような手段もあるということは覚えておくとよいでしょう。