債務整理ってなに?
弁護士、司法書士事務所のコマーシャルの影響もあって、ここ数年で、「債務整理」、「過払い」というワードは一気にメジャーになりました。
しかしその内容まで正しく理解している人はあまりいないのではないでしょうか。
ここでは、消費者金融の債務整理にについて詳しく解説しています。
カラクリは単純なので是非とも覚えておきましょう。
Contents
債務整理のカラクリ
消費者金融の債務整理は、大きく下記2種類に分けることができます。
- グレーゾーン時代の債務整理(2010年6月17日以前の契約分)
- 改正貸金業法施行後の契約の債務整理(2010年6月18日以降の契約分)
それぞれどのような根拠で、減額できるのか、そのカラクリを解説しておきましょう。
●グレーゾーン時代の債務整理
まずは、グレーゾーン時代の債務整理から解説していきましょう。
かつて利率に関する法律は下記の2種類がありました。
※利息制限法(旧)
(任意に支払った場合はこれを超えても有効な支払いとみなされる)
・~10万円未満・・20.0%
・10万円以上~100万未満・・18.0%
・100万円以上・・15.0%
(遅延利息は1.46倍)
※出資法(旧)
(任意かどうかは関係なく、これを超えた場合は業者に刑事罰が科せられる)
・・29.2%以内
つまり、利息制限法を超えた利率であっても、「任意で支払った場合(お客が納得のうえ支払った場合)」には出資法を超えていないのであれば有効な支払いとみなされていたということです。
当時は、このような考え方で、多くの消費者金融が、利息制限法以上出資法以下の利率(グレーゾーン金利)で貸付を行っていました。
但し、裁判などで争いになった場合は、この「任意」で支払いをしたことは消費者金融側が立証しなければなりません。
それを立証するには
- 契約書を遅滞ななく発行している
- 入金の都度領収書を発行している
ことが必要でした。
しかし、消費者金融への返済は銀行口座へ振込みで行うことも多く、コスト面や顧客の利便性を考慮して入金の都度領収書の発行はしていない会社がほとんどでした。(家族に内緒の方は領収書を郵送されたら困ります)
また、ATMから返済した場合に自動的にでてくる領収書は、任意で受け取った領収書にはあたらないとされました。
結果、消費者金融は、「任意」で支払ったことを立証できずに、弁護士、司法書士、裁判所などを通した場合は、過去に遡って、全て利息制限法の利率で再計算されることとなりました。
グレーゾーン金利で営業していた時代の債務整理のカラクリはこのようなものでした。
また、取引期間が長ければ長いほど、減額される金額は大きくなり、中には、消費者金融がお客にお金を返却しなければならないような事態も発生することになりました。
このように、お客が払い過ぎてしまっている状態のことを「過払い」と言います。
この「過払い」は、既に完済をした客にも有効です。
弁護士、司法書士事務所などが、CMなどで大々的な掘り起こしを行った結果、多くの消費者金融がこの過払い返還に耐え切れずに、廃業に追い込まれることとなってしまいました。
●改正貸金業法施行後の契約の債務整理
対して、改正貸金業法施行後(2010年6月18日以降)に契約した分の債務整理は、最初から利息制限法の範囲内で取引しているので、引き直し計算での減額はできません。
(もちろん、「過払い」もありません。)
そのため債務整理をしても減額できるのは、基本的には将来に渡る利息分だけなのです。
このように、グレーゾーン時代の契約と改正貸金業法施行後の契約では、債務整理をしても減額額が大きく違ってきます。
それでも、弁護士、司法書士への費用は発生するので、本当に債務整理をする意味があるかどうかは、よくよく検討しないといけません。
「払い過ぎた利息は取り戻せます!」は、グレーゾーン時代の契約(2019年6月17日以前の契約)にしか通用しないことは覚えておいてください。
債務整理のメリット・デメリット
また中には、グレーゾーン時代であろうがなかろうが、少なからず減額出来るのであれば債務整理をやった方が得じゃないかと考える方もいるかもしれませんがそれも早計です。
債務整理をするのであれば、後から後悔しないためにも、そのメリット、デメリットをよく理解しておきましょう。
●債務整理のメリット
- 過去に遡って、利息制限法で再計算されるので、取引の長い人は大幅な減額が計れる
(但し、グレーゾーン金利で取引していた人だけ。2010年6月18日以降に契約した人は、最初から利息制限法の範囲内の金利なので再計算はできない。) - 和解後は将来に渡る金利は原則0円となる
- 和解するまで直接督促されることは無い
●債務整理のデメリット
- 信用情報機関に事故情報が完済後5年間登録される(住宅ローンなどの審査は厳しくなる)
- 「過払い案件しか受任しない」、「安易に自己破産をすすめてくる」など利益偏重主義の信用に足らない弁護士、司法書士事務所もある
- 2010年6月18日以降に契約した分は、ほとんど減額の対象にならないことがある
多重債務で支払いが回らなく苦しんでいるような人は、債務整理をする意義は十分あると思います。
しかし支払い困難でもないのに債務整理をする場合は、デメリットのことも考えてよくよく検討すべきです。
債務整理をした結果、大した減額もできなかったのに、信用情報に事故が登録されたため、その後の借入がしにくくなっただけということにもなりかねません。
過払い金返還請求と債務整理の違い
近年、「払いすぎた利息は取り戻せます」と過払い金返還について、弁護士、司法書士事務所のCMが多く見られるようになりました。
この「過払い金返還請求」はいわゆる「債務整理」とはややニュアンスが違うので、分けて考える必要があります。
整理すると以下のようなイメージです。
●債務整理
多重債務で返済に行き詰っている方が、弁護士、司法書士に依頼をして消費者金融等の債権者と減額交渉を行うことを指す。
●過払い金返還請求
消費者金融等がかつて利息制限法を超える利率で貸付していたものを、利息制限法に再計算した結果、逆にお金が戻ってくることを指す。
このため、過去に消費者金融で長年、取引があった方などは、現在、返済に行き詰っている、いないに関わらず、過払い金返還請求手続きをすることができる。
また、明らかに過払い金返還請求目的で、弁護士、司法書士に依頼をした場合は、返済に行き詰った債務整理とは趣旨が違うので、指定信用情報機関には「債務整理」という事故情報は掲載されないことになっています。
(但し、債務整理の延長線で過払いに発展した案件は「債務整理」の事故情報が登録されてしまいます。)
このように、現在、過払い金返還請求は、債務者の当然の権利として、手厚く保護されるようになっています。
理論的には他社の利用を継続しながら、過払い金返還請求をすることも可能です。
今、利用しているキャッシングの利便性を損ないたくない場合は、そのことを、弁護士、司法書士に依頼する際によく相談すべきでしょう。
参考までに、「過払い金返還請求」の注意事項をまとめておきます。
- 消費者金融に請求をしなければ返還されない。
- 弁護士、司法書士など専門家に依頼しなければ、現実的に返還は困難。
- 過払いにも時効がある。(最終取引より10年間)
- 中小消費者金融は経営が圧迫されている会社も多く、満額返還を受けることは困難。