イマドキの債務整理事情!
法改正から既に10年以上が経過しました。
グレーゾーン時代に取引をしていたお客も少なくなった昨今の債務整理は昔ほど大幅な減額は見込めず、決して甘くはありません。
ここではそんなイマドキの債務整理に焦点をあてて解説していきたいと思います。
Contents
イマドキの債務整理の特徴
改正貸金業法の完全施行により、「グレーゾーン」が撤廃され、弁護士、司法書士による債務整理の手法は大きく変化しました。
まずは、イマドキの債務整理の特徴をおさえておきましょう。
●2010年6月18日以降の契約はあまり減額されない!?
従来、消費者金融は、出資法と利息制限法の間のグレーゾーンで営業をしていました。
(利息制限法を超えた利率であっても、「任意で支払った場合」には出資法を超えないのであれば有効な支払いとみなされていました。これを「みなし弁済」といいます)
但し、実際に、「みなし弁済」が認められることはほとんど無く、裁判上での争いになった場合には、それまでの取引は、全て利息制限法に再計算され、減額されることになっていました。
この論理で消費者金融に減額を強いるのが、かつての債務整理のカラクリだったのです。
(参考記事:債務整理ってなに?)
しかし、2010年6月18日の改正貸金業法施行によって、出資法金利も年率20.0%に引き下げられたため、現在の消費者金融の貸出にグレーゾーンは存在しません。
結果、消費者金融に大幅な減額を強いる根拠に欠けることとなり、改正貸金業施行後に融資を受けた分については、大幅な減額の対象にならない場合が多くなってしまいました。
●中小消費者金融からの過払い金の満額返還は見込めない!?
消費者金融にとって、「過払い金返還」の問題は、一時期よりは落ち着きはしたものの、現在でもかなり経営を圧迫する材料であることに変わりありません。
特に資金力に乏しい中小消費者金融にとっては下手をすると廃業に追い込まれかねない大問題です。
そのためイマドキの債務整理では、たとえ過払い金が発生していても、中小消費者金融から満額回収することは非常に困難な状況です。
過払い金の内、半額でも返還が受けられればマシな方で、場合によっては、額面の5%以下しか返還が受けられないということも珍しくはありません。
これで、文句があれば、差押えでもなんでもやってくれと、逆に、消費者金融に居直られてしまっている状態なのです。
●大手の過払い金をあてにしている!
前述のように中小消費者金融から、過払い金の満額返還を受けることは困難ですが、大手消費者金融であれば経営が健全化している会社も多く、過払い金も満額返還が見込めます。
そのためイマドキの債務整理は、大手消費者金融からの過払い金の返還で、改正貸金業法施行後に発生した貸付債務を清算する方法が一般的です。
中小消費者金融にとっては、大手消費者金融で過払い金が発生しているお客であれば、下手に返済を引き延ばされるよりも、むしろ債務整理をしてくれた方が回収しやすくなるので、債務整理が歓迎されるということもあり得ます。
債務整理の和解金額はこうして決まる
ところで債務整理の和解金額はどのように決めているのでしょうか。
もちろん弁護士、司法書士事務所は、出来る限り和解金額を下げようとしてきますし、消費者金融は利益を守るため、出来る限り和解金額を上げようとしてきます。
そのため和解交渉をする時は、ちょっとしたせめぎあいがあり、お互いにその会社の手口、方針を分析しているものです。
詳しく解説していきましょう。
●まずは和解元金を算出
まずは和解元金を算出します。
グレーゾーンがあった時代と違って、最近の借入れは、元々、利息制限法の範囲内なので、引き直し計算というものはありません。
そのため和解元金の算出根拠は以下の方法ぐらいしかありません。
(以下和解額が低くなる順)
- 遅れた日数分も含め全て通常利率で計算する。最終取引日の残元本のみで確定。
- 遅れた日数分を遅延利率で計算する。最終取引日の残元本のみで確定。
- 遅れた日数分は遅延利率で計算する。介入した日までの経過利息を計上して確定。
- 遅れた日数分は遅延利率で計算する。和解日までの経過利息を計上して確定。
●将来利息はカット
イマドキの債務整理で唯一の減額は「将来の利息」をカットすることです。
これにはほとんど全ての消費者金融が応じています。
●最初の和解が肝心!
債務整理を行っている弁護士、司法書士も限られているので、同じ事務所から介入することも多くあります。
なので、消費者金融にとって、重要なのは、いかに有利な前例をたくさん作るかということです。
「あの会社(事務所)との和解は、このパターンでないと話が進まない」
相手にそのように思わせるためには、最初の和解が肝心です。
最初で妥協した和解をすれば、次回、同じ事務所が介入したときの前例となってしまいます。
(これは弁護士側も同じです)
変な前例をつくると、これ以後の介入が全てその基準になってしまいかねません。
このためわずかな額であっても、双方こだわって和解を進めることになります。
●和解交渉のせめぎあいに勝つためには!
和解額のせめぎあいに競り勝つには、大袈裟ですが、次のような心構えが必要です。
※早く解決したい方が負ける!
大体において、和解交渉は早く解決つけたい側が不利になります。
当面、放置しても構わないと思っている方が精神的に圧倒的に有利です。
※覚悟がある方が勝つ!
双方の主張が平行線で、話し合いで和解が進まない場合は、訴訟を起こすことも可能です。
(弁護士・司法書士側、消費者金融側、どちらからも起こせます。)
裁判になれば、手間とコストがかかります。
そんなことをするくらいなら、相手の主張で和解した方が得な場合もあります。
損得問題ではなく覚悟を持っている方が大体勝ちます。
●他案件との調整にかけられることも!?
同じ弁護士、司法書士事務所から、複数の客に介入することは多々あります。
今回は、相手の顔を立てて、相手の主張をのむけれど、次の案件は、こっちの主張をのんでもらうといった、調整をかけた和解をすることもあるようです。
もっとも、お客は自分が調整をかけられたなんて知りようもありませんが・・。