総量規制を超徹底解説!
現在、消費者金融など貸金業者には原則、年収の3分の1を超える貸付けが禁止されていますが、実はこの「総量規制」について正しく理解している人はあまり多くいません。
「総量規制」は改正貸金業法の目玉であり、これを正しく理解することは重要なポイントです。
この機会に正しく「総量規制」を理解して、皆様のキャッシングに役立てて下さい。
Contents
総量規制って何?
●適用されるのは貸金業者のみ
総量規制とは、返済能力を超える貸付けに該当するかどうかを判断する基準として、消費者金融など貸金業者に、原則、年収額の3分の1を超える貸付けを禁止したもので、「貸金業法第13条の2第2項」で定められている貸出し規制のことを指します。
この総量規制の対象となる借入れは、指定信用情報機関に登録されている貸金業者からの借入れだけです。
そのため銀行のローンや、カードでの買い物など信販会社の販売信用(ショッピングクレジット)は含まれません。
ただし総量規制とは関係なく、返済能力を超える貸付は禁止されていますので、銀行や販売信用においても全く審査に影響しないわけではありません。
自分自身の借入れの中で、どの借入れが総量規制の対象となるのかを見分ける一番確実な方法は、指定信用情報機関に情報開示してみることです。
指定信用情報機関には、JICCとCICがありますが、中小消費者金融の大多数が加盟しているのはJICCなのでJICCに情報開示すれば十分です。
●銀行やショッピングクレジットが対象とならなかった理由
今回の法改正では貸金業者以外の銀行などからの借入れを総量規制の対象とすることは見送られました。
これは、国民生活センターの「多重債務問題の現状と対応に関する調査報告」の弁護士事務所などへの相談者の借入先を確認しても、
- 消費者金融・・74.7%
- 信販会社・・57.3%
- 銀行等(住宅ローン除く)・・34.0%
となっており、多重債務問題の一番の原因は消費者金融からの借入と判断されていることも関係しています。
但し改正後の多重債務問題の状況如何では、今後、銀行等も含んだ再改正の可能性も含んでいると言えます。
年収額にはどのようなものが含まれるの?
総量規制判定をするためのいわゆる「年収額」とは、通常は年間の給料収入のことを指しますが、それ以外にも以下の収入も含まれます。
- 年間の年金の金額
- 年間の恩給の金額
- 年間の定期的に受領する不動産の賃貸収入(事業として行う場合を除く。)の金額
- 年間の事業所得の金額(過去の事業所得に照らして安定的と認められるものに限る。)
上記以外の収入(例えば、宝くじや競馬等による一時的な収入)は、貸金業法上、年収には含まれないとされています。
年収の3分の1の根拠とは
総量規制の基準が「年収の3分の1」ということは広く知られていますが、その根拠はなんでしょうか。
年収等の「3分の1」という基準は、平均的な消費者金融利用者層の一般的な返済余力を踏まえて、以下の根拠から設定されています。
- 消費者金融利用者の年収が概ね600万円以下である
- 家計調査によると、年収600万円未満の世帯の毎月の実収入から実支払を引いた額が毎月の実収入の15%程度である
以上を基に毎月の収入の15%を返済に充てた場合、金利18%、元利均等払い、返済期間3年で借入可能な金額は年収の3分の1となります。
(また、ここで使用している返済期間3年とは、民事再生法において債務者の返済意欲持続の観点から、個人再生計画の期間を原則として3年以内と定めていることを参考にしたものです。)
要するに、年収の3分の1を超えない借入であれば、3年で返済することが可能なので、返済不能状態になる危険も少ないであろうということが根拠になっています。
しかし、利用者の中には年収等の3分の1を超える借入をしていても、何ら返済に困ることなく利用を続けていた方もいます。
今回の法改正による「総量規制」の導入によって、そのような一部利用者の利益は大きく損なわれることになりました。
しかしそのことよりも多重債務者を減少させるといことを優先させ、導入を進めたということでしょう。
総量規制の除外と例外
●総量規制の除外・例外の定義
総量規制の目的は、年収の3分の1を超える返済能力を超えた貸付を制限して、貸し過ぎ・借り過ぎ(多重債務)に陥ることを防止する点にあります。
この観点からも、総量規制は全ての借入に適用されるわけではなく、多重債務に陥る危険性が少ないと考えられる借入には、除外、例外が設けられています。
除外と例外の2つの違いは、下記の通りです。
※除外
貸付残高に合算されない(年収の3分の1を超える貸付けを行った直後に、さらに総量規制の対象となる貸付を行うことができる)
※例外
貸付残高に合算される(年収の3分の1を超える貸付けを行った直後に、さらに総量規制の対象となる貸付を行うことはできない)
もう少し詳しく説明していきましょう。
●総量規制の除外
総量規制の除外となる契約は下記の通りです。
- 住宅ローン契約など不動産購入のための貸付(つなぎ融資を含む)
- 自動車購入のための自動車担保貸付
- 一定の高額医療費の貸付
- 一定の証券担保貸付
- 一定の不動産担保貸付
- 売却予定不動産の売却代金により弁済される貸付
- 手形割引を内容とする契約
- 金融商品取引業者が行う500万円を超える一定の有価証券担保ローン
- 金融商品取引業者が行う500万円を超える一定の投資信託受益証券担保ローン
- 媒介契約
- 貸金業者が一定のNPOバンクに該当する場合の一定の貸付契約
代表的なものは、「住宅ローン」、「自動車担保貸付」、「不動産担保貸付」あたりです。
●総量規制の例外
総量規制の例外となる貸付も細かくは下記の通りです。
- 顧客に一方的に有利となる一定の借換え
- 総量規制抵触者の借入残高を段階的に減らしてゆくための借換え
- 一定の緊急医療費
- 外国において緊急に必要となった費用など緊急資金に係る貸付(特定緊急貸付契約)
- 配偶者と合算した年収3分の1以下の貸付
- 一定の個人事業者に対する貸付
- 新たに事業を行う個人顧客に対する一定の貸付
- つなぎ資金に係る貸付
代表的なものは、いわゆる「おまめとめローン」です。
保証人と総量規制の関係
●保証人にも総量規制は適用されるのか?
結論から言いますと、保証人に対して総量規制の適用はありません。
消費者金融などの貸金業者が貸付に関して保証契約を締結する場合、
- 保証人の返済能力調査が必要
- その際、指定信用情報機関を使用した調査が必要(保証人が個人の場合)
- 返済能力を超える保証契約は禁止
とされていますが、年収の3分の1などの制限はなく総量規制の適用はありません。
これは実際に返済を履行するかどうかは、保証人ではなく、主債務者の返済状況によるので、保証人に対しては数量的に規制するのは適当でないとされたためです。
●年収の3分の1を超える借入れのある者を保証人にできるのか?
年収の3分の1を超える借入れのある者を保証人とすることは理論的には可能です。
しかし、あくまで返済能力を超える保証契約は禁止されています。
「貸金業向けの総合的な監督指針」でも、主な着眼点として、
「保証人となろうとする者について、収入、保有財産、家族構成、生活実態、他からの借入状況及び既往借入額の返済状況等の調査を行い、実際に保証債務を履行せざるを得なくなった場合の履行能力及び保証人の具体的な認識を確認し、その内容も合わせて記録することとしているか」
とされており、そのような観点からも返済能力がないと判断されて、保証契約の締結が禁止される場合もあり得ます。
●保証人をつければ総量規制を超えても貸付できるのか?
これも結論から言いますと、保証人をつけても総量規制に抵触している場合は、貸付はできません。
前述したように、実際に返済を履行するかどうかは、主債務者次第です。
かつては、本人に支払能力がないのにも関わらず、保証人からの回収をあてにして本人の返済能力を超えた貸付をすることが、保証人をめぐるトラブルとして多く見られました。
現在の法律では、本人が総量規制に抵触する場合は、たとえ保証人をつけても貸付はできなくなりました。
自営業者にも総量規制は適用されるの?
●個人事業主の場合
個人事業主が事業目的で借り入れする場合でも、通常の収入や収益に対して、毎回の返済額が多ければ、返済に支障をきたし、多重債務に陥る危険性があります。
よって個人事業主に対する貸付も、原則、総量規制の対象となり、年収の3分の1を超える貸付は禁止されています。
ただし、個人事業主の借入総額が年収の3分の1を超えていても、借り手の事業実績や事業計画に基づいて借入総額の返済が合理的に見込まれる場合等、明らかに返済能力があると認められる場合に例外的に貸出が認められています。
具体的には、
- 事業計画書
- 収支計画書
- 資金計画書
の三計画書によって判断されることになります。
●法人の場合
法人ついては、その経営実態は様々であり、売上等の一定の数値的基準をもって、法人による借入を一律に過剰貸付とすることは困難であると考えられます。
よって対法人貸付は総量規制の対象外とされています。
ただし、対法人貸付であっても、法人及び保証人に対する返済能力の調査義務は課せられるので、貸金業者は適切な方法で調査を行う必要があります。
また、同様に一般的な原則としての過剰貸付け禁止の規制も適用されています。