上限金利の規制について
消費者金融を利用するのに「金利」、「利息」は本来、重要なポイントなはずですが、ほとんどの方が、正しく理解できていないのではないでしょうか。
中には、利用者の無知につけ込む悪質業者者も存在するので、正しい知識を身に着けて身を守る必要があります。
この機会に是非覚えておきましょう。
Contents
消費者金融の上限金利
現在、消費者金融の上限金利は以下のようになっています。
難しく考えなくて普通はこれだけ覚えておけば問題ありません。
※通常金利
・元本10万円未満・・20.0%
・元本10万円以上100万円未満・・18.0%
・元本100万円以上・・15.0%
※遅延損害金
・元本に関わらず一律20.0%
上限利率の注意事項
●金利は各社横並び
消費者金融を利用する際に、出来る限り金利の低い会社を利用したいと思うものですが、結論から言えば、どこの会社も金利は横並びで差はほとんどありません。
これは、大手でも中小でも同じです。
各社の金利表示は、
例えば、
①7.3%~18.0%
②10.0%~18.0%
など、最低金利と最高金利が表示されています。
上記の例だと、一見、②より①の方が、最低金利が低いため、お得な印象を受けます。しかし、ほとんどの方が最高金利の18.0%を採用されることになるので、実際の金利は、①も②も変わらないということになります。
最低金利に惑わされないように注意して下さい。
現在、各消費者金融会社の金利は多少の差はありますが、大手も中小会社も、元本10万円以上100万円未満であれば、
- 実質年率・・18.0%
- 遅延損害金・・・20.0%
の上限金利目一杯が基準になっており、どの会社もほとんど差はないのです。
●金利はなかなか下げてもらえない
かつては、大手消費者金融を中心に、取引実績に応じて利下げを行うといったサービスも見られましたが、法改正で上限金利の引き下げが行われてからは、なかなか利下げには応じてもらえなくなってしまいました。
大手でさえそうなのに中小消費者金融から、さらなる金利の引き下げを引き出すことは、非常に困難だと思われます。
●増額で金利が下がることもある
前述したように、通常、金利の引き下げにはなかなか応じてもらえませんが、増額をすることで金利が下がることがあります。
考えられるケースは次の2種類です。
- 限度10万円未満だった方が、限度10万円以上になる場合
(20.0%⇒18.0%) - 限度100万円未満だった方が、限度100万円以上になる場合
(18.0%⇒15.0%)
上限金利をさらに詳しく
ここまでの説明は初級編です。
ここからは上級者向けにもう一歩踏み込んで詳しく説明していきます。
少しややこしいのですが、ここまで理解しておけば金利については完璧なので頑張ってください。
消費者金融の上限金利は、「出資法」、「貸金業法」、「利息制限法」の3つの法律で規定されています。
そしてこの3つの法律はそれぞれ以下のようになっています。
≪出資法≫
- 貸金業者以外の上限金利・・109.5%
- 貸金業者の上限金利・・20.0%(当初109.5%から段階的に引き下げられてきた)
- 違反した場合は刑事罰
≪貸金業法≫
- 上限金利は(貸金業者が対象)、
元本10万円未満・・20.0%
元本10万円以上100万円未満・・18.0%
元本100万円以上・・15.0% - 違反した場合は行政処分
尚、貸金業者が109.5%を超える利息の契約をした場合、その契約自体が無効。
≪利息制限法≫
- 上限金利は(貸金業者か個人かに関わらず)、
元本10万円未満・・20.0%
元本10万円以上100万円未満・・18.0%
元本100万円以上・・15.0% - 違反した場合はその超過分について無効。(罰則なし)
このように、貸金業法の上限金利は利息制限法に合わせてられています。
貸金業法の上限金利を超えれば、行政処分の対象となりますし、さらに出資法の上限金利を超えれば刑事罰の対象となってしまうというわけです。
損害金の上限をさらに詳しく
利息制限法では、金銭消費貸借契約の不履行による賠償額の予定の上限を「法定利率の1.46倍」としています。
基本的には下記のようになります。
- 元本が10万円未満・・29.2%(20.0%×1.46)
- 元本が10万円以上100万円未満・・26.28%(18.0%×1.46)
- 元本が100万円以上・・21.9%(15.0%×1.46)
さらに利息制限法は、消費者金融会社など、貸金業者が貸付けを行う場合には、損害賠償額の上限は一律20.0%とされています。(営業的金銭消費貸借の特則の賠償額の予定の特則)
グレーゾーン金利とは
かつて消費者金融業界には、現在の貸金業法という法律はなく、「貸金業規制法」という法律で規制されているだけでした。
そして貸金業規制法での上限金利の規定は、利息制限法を超えても出資法を超えなければ、お客が「任意」で支払った場合に限り有効な支払いとみなすとされていました。
(仮に、「任意」で支払ったことが後々認められなかったとしても、利息制限法違反には罰則規定がありません。)
改正前の出資法では、貸金業者の上限金利は29.2%でした。(当初109.5%から段階的に引き下げられてきた)
利息制限法は上記で説明したように、元本10万円未満が20.0%、元本10万円以上100万円未満は18.0%、元本100万円以上は15.0%です。
この、利息制限法以上出資法未満の金利帯は「グレーゾーン金利」と呼ばれ、当時、多くの消費者金融は「グレーゾーン金利」の金利設定で営業していたわけです。
しかし実際は「任意」で支払ったということを証明することは難しく、裁判所や弁護士、司法書士を通して和解をする場合は、全て利息制限法に基づいて再計算されることになっていました。
そのため取引が長ければ長いほど、引き直しによって減額される額は大きくなり、場合によっては、お金をお客に返却しなければならないケースも出てきたというわけです。
(お客側が返金請求をすることは特に「過払い金返還請求」と呼ばれています。)
営業的金銭消費貸借の特則
「営業的金銭消費貸借」なんて言葉は、聞きなれないと思いますが、要は貸金業者などが商売で行っている貸付けのことです。
利息制限法では、この営業的金銭消費貸借について、一般のお金の貸し借りと区別して特則を設けています。
専門用語が多くて、わかりにくいかもしれませんが、要は、商売でお金を貸すときは、業者が利息を取り過ぎないように、個人的にお金を貸すときよりも厳しく制限を設けているということです。
①元本額区分の適用の特則
従来の利息制限法では、同じお客に対して複数の貸付を実施した場合の特則がなく、個別の貸付ごとに貸付元本の金額に応じて上限金利の算出をしていました。
例えば、同じ貸し手が15万円を一括して貸付けた場合の上限金利は18.0%になりますが、7万円と8万円に分けて貸付けた場合には、それぞれの上限金利は20.0%になるという問題がありました。
このため多くの貸金業者は、元本額を小口に分割して上限金利を下げないように、規制の潜脱行為を行っていました。
そこで現行の利息制限法では、債権者が業として行う金銭消費貸借が同一の当事者間で複数ある場合における元本区分の適用の特則を設けています。
(1)追加融資場合の適用
新たな追加貸付けに対する利息はすでに貸付している元本額と追加貸付けの元本額を合算し、その合計額の金額区分に応じた上限金利が適用されることになります。
例えば、すでに7万円を貸付している場合に、後に追加で8万円の貸付を行った際には、追加で貸付する8万円に対しては15万円(7万円+8万円)を基準にした、18.0%の上限金利が決定されることになります。
(ただし、もともと貸付していた7万円に対しての上限金利は20.0%のままです。)
(2)同時融資の場合の適用
債務者が同じ債権者から同時に2つ以上の貸付けを受ける場合には、それぞれの貸付けの合計額により各貸付けに係る上限金利が決定されます。
例えば、同時に7万円と8万円の貸付けを受けた場合には、双方に、その合計額15万円を基準にした18.0%の上限金利が決定されることになります。
②みなし利息の特則
利息とは本来元本使用の対価であり、元本の額およびその使用期間に応じて支払われるものです。
しかし、その他の手数料などが利息に含まれないとなると、手数料名目で利息を徴求することで、上限金利規制を潜脱することが可能になってしまいます。
そこで、現在の法律では、営業的金銭消費貸借(貸金業者などが商売で行っている貸付け)の利息の概念は下記のように統一されています。
●みなし利息から除外される金銭
※契約締結および弁済の費用
- 公租公課の支払に充てられるべきもの
- 強制執行の費用、担保権の実行としての競売手続の費用その他公の機関が行う手続に関してその機関に支払うべきもの
- 債務者が金銭の受領、弁済のために利用するATMの利用料(ただし、利用金額が1万円以下の場合には110円、1万円超の場合には220円の範囲)
※債務者の要請により債権者が行う事務の費用
- 金銭の貸付け、弁済のために債務者に交付されたカードの再発行手数料
- 貸金業法に基づき債務者に交付される書面の再発行手数料、再提供手数料
- 口座振替の方法による弁済において債務者が弁済期に弁済できなかった場合の再度の口座振替費用
③賠償額の予定の特則
利息制限法では、金銭消費貸借契約の不履行による賠償額の予定の上限を「法定利率の1.46倍」としていますが、営業的金銭消費貸借の場合は、損害賠償額の上限は一律年20%となっています。
④保証料の制限等の特則
営業的金銭消費貸借の場合は、保証人が主たる債務者から受けるべき保証料につき、主たる債務の利息と合算して上限金利規制の対象となります。
その他、根保証等における保証料の特則も設けられていますが、法改正以降、実質、債務者から保証料を取得するタイプの保証会社は存在しないので、詳しい説明は省きます。